殺風景さっぷうけい)” の例文
外から見ると、かざりもなんにもない殺風景さっぷうけいな建物であったが、玄関からなかへはいってみると、家具などがなかなかりっぱであった。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
やかましい国侍くにざむらいども、殺風景さっぷうけいな歌ばかり歌いおるわ……そもそも、島原の投節なげぶし、新町のまがき節、江戸の継節つぎぶし、これを三都の三名物という。
どうして、あのたびとりは、こんなにさびしい殺風景さっぷうけい野原のはらりるのだろう? とにかくあのとりは、この野原のはらりようとおもっているのだとかんがえました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして現在では煤煙ばいえんで痛めつけられた木の葉や草の葉に生色がなくほこりまびれにれた大木が殺風景さっぷうけいな感じを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
粟野さんは彼の机の向うに、——と云っても二人の机をへだてた、殺風景さっぷうけい書棚しょだなの向うに全然姿を隠している。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かかるところへ、かすみのなかから、ポカリときだした一列の人かげがある。寂光浄土じゃっこうじょうど極楽ごくらくへ、地獄じごく獄卒ごくそつどもがってきたように、それは殺風景さっぷうけいなものであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冬や春は川底に味噌漉みそこしのこわれや、バケツの捨てたのや、陶器の欠片かけらなどが汚なく殺風景さっぷうけいに見えているのだが、このごろは水がいっぱいにみなぎり流れて、それに月の光や
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ひどく殺風景さっぷうけいにあじけなく見え、そういうもののなかにあって、じぶんのたましいが、ちょうど、いばらの中につっこんだ手のように、いためられるのを感じることがあったが
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
嵐山其ものと桂川かつらがわとは旧に仍って美しいものであったが、川の此岸こなたには風流に屋根ははぎいてあったが自働電話所が出来たり、電車が通い、汽車が通い、要するに殺風景さっぷうけいなものになり果てた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
軍政時代に軍人が建てたものだからかなり立派にできている代りにすこぶる殺風景さっぷうけいである。入浴時間は十五分をゆべからずなどと云う布告ふこくめいたものがまだ入口に貼付けてある通りの構造である。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またどんなにも殺風景さっぷうけいなことでございましょう。
殺風景さっぷうけいこの上なしだ。これをながめるおれたち市民の心も焼土のようにざらざらしている。そこへ花を売ってみねえ。みんなとびついて来るぜ。やってみりゃ、それはわかる。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
がらんとした殺風景さっぷうけいたなばかりの部屋であった。その棚の一つを博士は指さした。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「やあ、三郎。月の世界って、殺風景さっぷうけいだね。まるで墓場みたいじゃないか」
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
六万坪という広い区域に一定いっていのあいだをおいて建てられているところは殺風景さっぷうけいそのものであったし、それにこのごろになって壁は風雨ふううにうたれてくずれはじめ、ところどころに大きく穴があいたり
骸骨館 (新字新仮名) / 海野十三(著)