欝々うつうつ)” の例文
「青青翠竹尽是真如、鬱鬱黄華無般若。」(青々たる翠竹すいちくはことごとくこれ真如にして、欝々うつうつたる黄華こうかは般若にあらざるはなし)
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
そしてその後へ残ったものは欝々うつうつたる原始林に取り囲まれた火山岩で造られた大穴である。所々の水溜には小魚がピチピチ刎ねているし水草が岩石にからまっている。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
紀州灘きしゅうなだ荒濤あらなみおにじょう巉巌ざんがんにぶつかって微塵みじんに砕けて散る処、欝々うつうつとした熊野くまのの山が胸に一物いちもつかくしてもくして居る処、秦始皇しんのしこうていのよい謀叛した徐福じょふく移住いじゅうして来た処
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
繻子じゅすとゆうぜんいりのかんこ縮緬の腹合せの帯をしめ。けんちゅうのくろき羽織をきたるみなりゆかし。勤は日ごろ欝々うつうつとしてたのしまざりしも。この活ける花をみては。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
賛五郎はごろりと横になって、世に入れない欝々うつうつとした顔を、手枕てまくらにのせて眼を閉じた。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
欝々うつうつと頭を押しつけて、ただもう蒸し暑く、電気を含んだ空は、かさにかかっておどかしつけるようで、感情ばかり苛立いらだつ、そうして存外に近い山までが、濃厚な藍靛らんてん色や、紺色に染まって
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
政宗の意中は、いつまで奥羽の辺鄙へんぴ欝々うつうつとして蟠居ばんきょしようや、時を得、機に乗じて、奥州駒おうしゅうごまひづめの下に天下を蹂躙じゅうりんしてくれよう、というのである。これが数え年で二十四の男児である。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
宇治は欝々うつうつとうなだれて方途ほうともなく無茶苦茶に歩いた。道は再び密林に入った。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
此処は西欝々うつうつとした杉山すぎやまと、東若々わかわかとした雑木山ぞうきやまみどりかこまれた田圃で、はるか北手きたてに甲州街道が見えるが、豆人とうじん寸馬すんば遠く人生行路じんせいこうろを見る様で、かえってあたりのしずけさをえる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
山の雪はおおかた消え欝々うつうつたる緑が峰に谷に陽に輝きながら萌えるようになった。辛夷こぶし、卯の花がに見え山桜の花が咲くようになった。うぐいすの声、駒鳥こまどりの声がやぶの中から聞こえて来る。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それも欝々うつうつたる殺気を持った恐ろしい野性でございました。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)