棒立ぼうだ)” の例文
私の眼は彼の室の中を一目ひとめ見るやいなや、あたかも硝子ガラスで作った義眼のように、動く能力を失いました。私は棒立ぼうだちにすくみました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ハタと板塀いたべい突当つきあたつたやうに、棒立ぼうだちにつてたが、唐突だしぬけに、片手かたててのひらけて、ぬい、と渠等かれらまへ突出つきだした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あおむいたまま、いつまでも棒立ぼうだちになっている竹童ちくどうの顔へ、上のこずえからバラバラと松の皮がこぼれ落ちてきたが、かれは、それをはらうことすらも忘れている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼がおどろいて棒立ぼうだちになっているところへ隊長のマルモ・ケンやカンノ博士などがはいって来た。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
フィアレンサイドが、びくっとびあがり、ホール夫人ふじん棒立ぼうだちになった。
私はおどろきとおそれと喜びに瞬間しゅんかん棒立ぼうだちになった。
邪慳じやけんに、胸先むなさきつて片手かたて引立ひつたてざまに、かれ棒立ぼうだちにぬつくりつ。可憐あはれ艶麗あでやかをんな姿すがたは、背筋せすぢ弓形ゆみなりもすそちうに、くびられたごとくぶらりとる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
博士はくしは声をのみ、ぶきみに動くカーテンをみつめて棒立ぼうだちになっていた。
隆夫に似た青年は、ついに聖者の前に棒立ぼうだちになった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)