すぢ)” の例文
新字:
島田の家は有馬の家と同じ通りすぢの六七丁目違つたところにあり、札幌を一直線に南北に仕切る水道の一つ手前の横町だ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
そして、太陽は、かくれたる所から、水のやうな光線ので以つて、空をすぢづけてゐた。彼女は、ゆきくれた旅人のやうな、たよりなさを感じた。
幸福への道 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
掃き集めた芥を燒く白い煙が木立の陰から幾すぢにも上り、風のかげんでその匂ひが駿介の立つあたりまでも流れて來た。
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
鼠色のきたない雨漏りのすぢのいくつもついてゐる部屋の壁には、去年の大晦日おほみそかの晩に一高前の古本屋で買ひ求めた
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
己をまもらんためさとりわざとをもて人々の作る陰を分けつゝをりふしすぢを引く光の中に、長き短き極微の物體 一一二—
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
其處で早速頭の中に地圖をひろげて、それからそれへとすぢをつけて行くうちに、いつか明瞭に噸序がたつて來た。
みなかみ紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
そこをのぼると、ちやうど私の正面にあるのがテムプル先生のお室であつた。鍵穴かぎあなドアの下から、光が一すぢ洩れてゐるばかりで、深い靜けさがあたりに浸潤してゐた。
いはなはいろすこくろはらあかてんがあり、やまめはいろしろたてうつくしい藍色あゐいろすぢがあります。またやまめのくちはいはなよりすことがつてゐて、おほきさはとも七八寸しちはつすんがとまりです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
れて亂るるすぢの色、あるは叫びぬ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
わがさきにいへる處と合し、かの螺旋らせん即ちそが日毎ひごとに早く己を現はすそのすぢを傳ひてめぐれり 三一—三三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
二つの手の存在が判然はんぜんとしなくなつた時、二人は空につゞくかぎりない白い路と、灰色の野の上に太陽の光線の箭にすぢづけられた雲の色とを、繪でも見るやうに眺めた。
幸福への道 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
沼を横ぎると、草原の中に一すぢの白色の筋が見える。近づいてみるとそれは街道か軌道である。