かみ)” の例文
今日は赤坂八百勘にて、そのかみの同窓生が、忘年会の催しありとて、澄が方へも、かねてその案内あり。午後五時よりとの触れ込なれど。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「陛下には、なおそのかみの盟をお忘れありませんか。不肖も、関羽の仇を報ぜぬうちは、いかなる富貴も栄爵も少しも心の楽しみとはなりません」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われ毛虫けむしたりし時、みにくかりき。吾、てふとなりてへばひとうつくしとむ。人の美しと云ふ吾は、そのかみの醜かりし毛虫ぞや。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
大津は梅子の案内で久しぶりに富岡先生の居間、即ち彼がそのかみ漢学の素読そどくを授ったへやに通った。無論大学に居た時分、一夏帰省した時もうた事はある。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そして神秘な古典の物語りを思い出し、ありしかみの日の幾多重ねた争闘の人間に与えし歴史を憶う……
聖堂の近くを過ぐる (新字新仮名) / 今野大力(著)
我れより其邸そこを訪はんは見る目かぐ鼻うるさし、此車にて今よりと能書の薄ずみ其かみならば魂も消えぬべし、これ見よおそよ、波崎さまは相變らずお利口なりとて
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのかみ、よろこび、そは
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かみの日は皆空しきに
青き蜜柑 (新字旧仮名) / 森川義信(著)
そのかみ、いかなる王侯が居を構えていたものか、規模広大な山城であるが、山嶂さんしょう塁壁るいへき望楼ぼうろうはすべて風化し、わずかに麓門ろくもんや一道の石階せっかいなどが、修理されてあるかに見える。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてただ滄州そうしゅうの片ほとりに、そのかみの庭園ややかたの美に、かすかなる金枝玉葉きんしぎょくようの家の名残りをたもち、地方人の畏敬と、あるじの徳望とによって、なお門戸に、いくたの客を養い
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もしやそのかみの、小右京こうきょうさまでございませぬか」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)