擧句あげく)” の例文
新字:挙句
そらまた化性けしやうのものだと、急足いそぎあし谷中やなかく。いつもかはらぬ景色けしきながら、うで島田しまだにおびえし擧句あげくの、心細こゝろぼそさいはむかたなし。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まる一晝夜、心當りを探し拔いた擧句あげく、思案に餘つて兩國から、フラフラと入水じゆすゐしようとしたので御座います
この與力よりきもなく、但馬守たじまのかみから閉門へいもんめいぜられた擧句あげくに、切腹せつぷくしてしまつた。とが箇條かでううちには、多田院御用ただのゐんごよう立札たてふだ無禮ぶれいがあつたといふくだりもあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
その擧句あげくに、全くちよいとした事から人に先んじて一つの有力な手掛を掴み出した時、そのまま飛び上つて踊り出したいやうな、慾得離れた嬉しさとつたら
探偵小説の魅力 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
その擧句あげくには二三人家から飛び出して來てめたん子を趁ひ立てる事は、毎度の事である。
めたん子伝 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
幾ら贔屓ひいきだつたと云つたつて、死骸しがいまで持つて來るのはひどいと云つて、こちらからは掛け合つたが、色々談判した擧句あげくに、一旦いつたんいけてしまつたものなら爲方しかたが無いと云ふことになつたと
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
あら、しつとりしてるわ、夜露よつゆひどいんだよ。ぢかにそんなものにこしけて、あなたつめたいでせう。ほんとに養生深やうじやうぶかかたが、それ御病氣ごびやうき擧句あげくだといふし、わるいわねえ。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ケロリとして、庭に出ると、寺男を捉まへて小半日植木の講釋などをした擧句あげく、今度は本堂の中に入つて、寺相應の彫刻やら額やら繪やらを眺めて、お厨子の方などは振り向いて見ようともしません。