)” の例文
深川の三十三間堂は、京の三十三間堂をして造つたもので、維新近くまで通し矢のもよほしがあり、矢數帳やかずちやうが今でも遺つてをります。
われは心ともなく手を伸べて身邊をし、何物とも知られぬながら、竪き物の手に觸るゝを覺えて、しかとこれに取り付きたり。
唐制にして位階も定め服色も定め年号も定めおきからぶりたる冠衣かんいけ候とも日本人が組織したる政府は日本政府と可申候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
大体石屋根は日本で極めて珍らしく、越前えちぜんや紀伊に多少あると聞いたが、それは皆普通の屋根瓦をした形である。
野州の石屋根 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
大伽藍のように壮麗な側壁、天空をした高い天井、輝き渡った床と円柱、アフガンの厚ぼったい緋の絨氈じゅうたん
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
げん土器どき底面中ていめんちうには網代形あじろかたあと有るもの有り、土器形状模様もよう中には明かに籠の形をしたるもの有り、コロボックルが籠のるいを有せし事は推知すいちし得べきなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
彼は俳句に得たると同じ趣味を絵画に現わしたり、もとより古人の粉本ふんぽんし意匠を剽竊ひょうせつすることをなさざりき。
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
土噐の形状中にはかごかたせしものも有れは此考へは一概に空想くうそうなりとは云ふ可からす。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
今までこれらのものの存在を見棄みすてたのは自覚の不足にる。どの公な物産陳列所も、申し合せでもしたかのようにその地方の固有のものをならべない。そうして都風みやこふうしたものを目指している。
地方の民芸 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
土佐派狩野派かのうはなどいふ流派さかんになりゆき古の画を学び師の筆をするに至りてまた画に新趣味といふ事なくなりたりと覚ゆ。こは画の上のみにはあらず歌もしかなり。(二月一日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
かの魚彦なひこがいたずらに『万葉』の語句を模して『万葉』の精神を失えるに比すれば、曙覧が語句をせずしてかえって『万葉』の精神を伝えたる伎倆は同日に語るべきにあらず。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)