さぐ)” の例文
新字:
「盲鬼は手でさぐつて當てるのが本當ぢやないか。匂ひを嗅いで當てるなんて、犬ぢやあるまいし——私はそんな事で鬼になるのは嫌だよ」
埃もなく取り亂したあとのない部屋は、いままで誰かがゐたとも思はれる人の氣はひが、次第に二人の眼を部屋のすみずみをさぐらせる誘惑をこころみた。
はるあはれ (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
逞ましき馬は前脚もてさぐりつゝ流に入りしが、水の脇腹に及ぶころほひより、巧に泳ぎて向ひの岸に着きぬ。
かゝる願あるものは速にシエクスピイヤが戲曲の集をなげうちて專らその傳記をさぐるべし。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
つと、の(おもつた)がえて、まざ/\とうしてものを言交いひかはせば、武藏野むさしのをか横穴よこあなめいた、やま場末ばすゑびたまちを、さぐり/\にかせいで歩行あるくのが、さそはせて、としのやうに
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それが竹光と後で氣が付いた時は追付かない。死骸の着物の上から三度も四度も竹光を通して、漸く槍で突いた創口をさぐり當てた
あからさまにえりさぐわかをとこ
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平次は素直すなほに折れました。殺しがあつた上は、事件の底の底までさぐつて、下手人を擧げてやらうと言つた、御用聞の責任感に立ちかへります。
「よくもさぐつた。——さすがは錢形の親分、恐れ入つたよ。——私はもう覺悟を決めて居て逃げも隱れもするわけではない」
「今日一日でさぐつたことをまとめて話すうちに、何んかよい智慧が浮ぶかも知れねえ。鼻を掘らずに、神妙に聽くんだよ」
平次は其處からすぐ八丁堀へ飛んで行つて、笹野新三郎の口から町奉行を動かし、大目付にさぐりの手を入れました。
其處を宜い加減に切上げて、山下に向ふ途中、ガラツ八は相變らずの早耳でさぐつたことを平次に報告するのでした。
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
痛くない腹をさぐられないとも限らないから、兎も角下手人の擧がるまではムズ/\し乍らも我慢して居ますがね。
内儀が上方かみがたで勤めをして居た頃の客だつたさうで、——後を追驅けるやうに目黒に來て、ブラブラ樣子をさぐつてるうち、庄司の伜の彌三郎と懇意になり
案内知つた自分の家へまぎれ込んで樣子をさぐつた上、金次の煙草入を持出して、清六の風呂へ出るのを待ち受け、途中から柳原河岸へおびき出して殺したんだ
夜風のせゐか、男女取交ぜ十幾人の顏は、心持緊張して、さぐるやうな瞳が、お互の間をせはしく往復します。
半日がかりで調べたら、大概たいがいのことがわかるだらう。手が廻らなかつたら、下つ引を五六人狩り出して兩家の親類縁者、出入り商人にまでさぐりを入れるんだ、宜いか
辨次郎は觀念したらしく、腹卷をさぐつて匕首あひくちを一口取出し、柄をぎやくにして、平次のの上に戴せます。
「先刻まで店の前を掃いて居たやうだ。何んとかして、あの小僧の懷中をさぐつて見ろ、大事なものは、身につけて置いた筈だ——荷物を調べたのは俺の考へ違ひだつたよ」
平次は血潮の附かないところをつて歩き乍ら、下手人の意圖をさぐらうとして居る樣子です。
「その春松の樣子をさぐつて來てくれ、あの晩どこへ行つたか。——そいつは大事なことだよ」
それをさぐり當てて新聞社へ持つて行くと、十圓の勸業債券かんげふさいけんが一枚貰へる仕組みでした。
平次は念のために、穴をさぐつて見て、あわてて手を引込めました。穴を形作る板のへりには、幾個所かに釘を植ゑて、そのびた釘で、少しばかりの引つ掻きを拵へてしまつたのです。
守隨彦太郎は腰をさぐつて、なめし革で作つた鍵袋を出して見せるのです。
立ち上がつて自分の懷中をさぐつた東作、さすがに酒のよひも覺めました。
「内からさぐつて判らないくらゐだもの、外から判るわけはないよ」
「これは不思議だ、着物の外からさぐつて突つ立てたのかい」
お六の言葉から、これ以上のことをさぐる工夫はありません。
庄司三郎兵衞は腰のあたりをさぐつて見せるのです。
右手に懷をさぐると取出したのは一條の捕繩。
思はず懷をさぐつて手馴れた四文錢が二三枚
「五日の間にさぐつたのは、それつきりか」
平次は要領のさぐりを一本入れました。
平次はさり氣なくさぐりを入れます。