揚足あげあし)” の例文
狸でも赤シャツでも人物から云うと、おれよりも下等だが、弁舌はなかなか達者だから、まずい事を喋舌しゃべって揚足あげあしを取られちゃ面白くない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「親分は揚足あげあしをとるから叶わない、その辺がケエ談だらけで、足の踏みどころもないとしたら、怪談で一杯でしょう」
苦労を知らない殿様同志だから、人の揚足あげあしをとったとなるともう放さぬ。それでは今晩一晩で庭を作って見せて下さい。ああよろしいとも。キッとですね。
青春論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
言葉じりとらえたり揚足あげあしを取る人ならば、花を好むというは、「戊申詔書ぼしんしょうしょ」のを去りじつくというご趣旨にそむく、違勅いちょく逆臣ぎゃくしんなりなどいうこともあろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ヘタをいえば揚足あげあしを取る。一かつや二喝ではおどろかない。時々、皮肉な歯を見せてせせらわらう。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この印を捺した白紙の事を「空道こうだう」といい伝えている。これをきいてある人は君はどこからそういう史料を探してきたか、何か記録にでも書いてあるのかと揚足あげあしを取るかも知れぬ。
沖縄人の最大欠点 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
容易に国家結合の基礎を固めることができて揚足あげあしを取られやすい下手な説法などに苦心するの必要もなく、千年万年の後までも日本人は愛国心・尊皇心の強い国民であるであろうと信ずる。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私の書いたものから特に欠点のみ拾って揚足あげあしを取ろうとする悪戯いたずら的気分や小人的敵意に満ちた人はともかく、私に多少の愛を持って私の長所を発見し、それを助成しよう、補導しようとする人ならば
平塚さんと私の論争 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
いえ、揚足あげあしを取ると思ふと、はらが立つでせう。左様そんなんぢやありません。それ程えら貴方あなたでも、御金おかねがないと、わたし見た様なものにあたまげなけりやならなくなる
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いかなることでも揚足あげあしをとり曲解することは容易なるわざで、口の先は偉い力を有するものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
教義の揚足あげあしとりなどはよそに、自己のうちに、論敵を求め、自己のうちに真理をつかもうとして、焦心あせり合っているくらい、それは、すさまじい魂の磨き合いを見せていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先輩のルービンシュタインは辛辣しんらつな批評家で、遠慮会釈えしゃくもなく、チャイコフスキーの作曲の揚足あげあしを取ったが、それに腹を立てるようなチャイコフスキーでもなかったのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
彼らの僕を遇する態度にもとより変りはなかった。僕の彼らに対する様子もまた二カ月前の通りであった。僕と彼らとはもとのごとく笑ったり、ふざけたり、揚足あげあしの取りっくらをしたりした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「よし、判つた。八五郎に揚足あげあしを取られるやうぢや世話アねエ」
と、眼八は、すぐに揚足あげあしをとって
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よし、判った。八五郎に揚足あげあしを取られるようじゃ世話アねエ」
揚足あげあしを取るな、困った奴だ」
揚足あげあしを取るな、困つた奴だ」