揚羽あげは)” の例文
かごける、と飜然ひらりと来た、が、此は純白ゆきの如きが、嬉しさに、さっ揚羽あげはの、羽裏はうらの色は淡く黄に、くち珊瑚さんご薄紅うすくれない
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、この市井しせゐの一些事さじらしい『揚羽あげはのお艶』の噂が、飛んだ凄まじい事件に發展しやうとは、錢形平次も思ひ及ばぬことだつたに違ひありません。
出口に花をつけたきりの古木があった。羽の黒い大きな揚羽あげはちょうがひらひらと広栄の眼の前を流れて往った。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「おお。ひとりは金の揚羽あげはちょう、もう一名は浅黄地に石餅こくもちを白く抜いた旗差物の持主にござりますか」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
縁側のなかほどから奥の八畳の間に書帙しょちつ書画帖しょがちょうなどがさらしてある。障子もふすまも明け放してあるので、揚羽あげはちょうが座敷の中に飛込んで来て、やがてまた庭の方へ飛んで行く。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「オ! 三つ揚羽あげはの蝶がへえってゆく。宇都木うつぎさまだぜ。絵のような景色だなア」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「いいえ、抱茗荷じゃござんせん、たしかに揚羽あげはの蝶でございました、揚羽の蝶だから私は、これは備前岡山で三十一万五千二百石、池田信濃守様の御同勢だと、こう思うんでございます」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あれは確かに揚羽あげはの蝶の模様でしたね」
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かごける、と飜然ひらりた、が、これ純白じゆんぱくゆきごときが、うれしさに、さつ揚羽あげはの、羽裏はうらいろあはに、くち珊瑚さんご薄紅うすくれなゐ
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
娘お絹、血潮の中に浸つた、美しい揚羽あげはの蝶を思はせる娘は、母親お篠の腕の中に、最後の痙攣けいれんゆだねて、白い額を見せて、ガクリと仰向きました。
身をかえすとお紋は、大きい揚羽あげはちょうのように、ヒラリとふすまの蔭へ隠れました。多分お勝手の指図でしょう。
たもとが中に、袖口をすんなり、白羽二重の裏が生々いきいきと、女のはだを包んだようで、た人がらも思われる、裏が通って、揚羽あげはの蝶の紋がちらちらと羽を動かすように見えました。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
身をかへすとお紋は、大きい揚羽あげはてふのやうに、ヒラリと襖の蔭へ隱れました。多分お勝手の指圖でせう。
飛んで、忍び返しに引っ掛るわけはねえ、それに江島屋には、揚羽あげはのおえんという、若い男をフラ/\にさせる、結構な餌が居るんだ、恋患いの講中を、片っ端から洗って見るがいい
飛んで、忍び返しに引つ掛るわけはねえ。それに江島屋には、揚羽あげはのお艶といふ、若い男をフラフラにさせる、結構なゑさがゐるんだ。戀患ひの講中を、片つ端から洗つて見るが宜い
揚羽あげはのおえんというんだから、大したものでしょう」
揚羽あげはのお艶といふんだから、たいしたものでせう」