揉上もみあげ)” の例文
あへちうするにおよばないが、くるまうへ露呈あらは丸髷まるまげなり島田しまだなりと、散切ざんぎりの……わるくすると、揉上もみあげながやつが、かたんで、でれりとしてく。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いつそ揉上もみあげを短くして、ハイカラに分けてやらうか知ら。」と楯彦氏は理髪床かみゆひどこく途中、懐手ふところでのまゝで考へた。
此間このあひだ停車場ステイシヨンへ小林萬吾まんごと一緒に迎へに来てれた時も既に感じた事であつたが、揉上もみあげをよい程にみじかく剃り上げて見違へる程色の白い美しい男に成つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
左の方に鼻眼鏡はなめがねをかけて揉上もみあげ容赦ようしゃなく、耳の上でり落した男が帳面を出してしきりに何か書いている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ぼんやり視線を注いでいると、ふと敏子の耳が眼に止った。後ろにかきあげた揉上もみあげの毛に半ば隠れ、幾筋もの曲線をうねらし、耳垂みみたぼがしゃくれっ気味に締れ上っていた。
子を奪う (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
病気にかかる前、ある友人と会食したら、その友人が短かくった余の揉上もみあげを眺めて、そこから白髪におかされるのを苦にしてだんだん上の方へげるのではないかと聞いた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
床屋の主人あるじ揉上もみあげあたりで二三度剃刀はさみを鳴らしてゐたが