掃出はきだ)” の例文
窓の下はコールタのげたトタンぶきの平屋根で、二階から捨てる白粉おしろい歯磨はみがきの水のあとばかりか、毎日掃出はきだちりほこりに糸屑いとくずや紙屑もまざっている。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ないものはないので、座敷ざしきると、あとを片附かたづけて掃出はきだしたらしく、きちんとつて、けたてのしんほそめた台洋燈だいらんぷが、かげおほきくとこはして
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「オイ、稲垣君、君は細君を掃出はきだしたなんて——今、細君が愁訴いいつけに来たぜ」と宗蔵も心やすだてに。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
厳重に蓋をして目張りを打つと、残った味噌と鋸屑おがくずは皆、海に投込んでしまった。アトを綺麗に掃出はきだして、海岸を流して行く支那ソバを二つ喰うと、知らぬ顔をして寝てしまった。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
とり玄關げんくわん敷臺しきだい掃出はきだしながら如何に相手が青年にさいでも日がない故とぼけるにも餘程ほねをれたはへしかし五十兩の仕業しごとだからアノ位なる狂言きやうげんはせにや成舞なるまひと長庵はひとり微笑みつゝ居たりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)