指示さししめ)” の例文
我は小橋のもとにて彼の汝を指示さししめし、指をもていたく恐喝おびやかすを見たり、我またそのジェリ・デル・ベルロと呼ばるゝを聞けり 二五—二七
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
少年の用いていた餌はけだし自分で掘取ったらしい蚯蚓みみずであったから、いささかその不利なことが気の毒に感じられた。で、自分の餌桶を指示さししめして
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その手に一条の竹のむちを取って、バタバタと叩いて、三州は岡崎、備後びんごは尾ノ道、肥後ひごは熊本の刻煙草きざみたばこ指示さししめす……
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三人は指示さししめされた処を見やった。その壁の一部には、もう羽根もまばらになった怪鳥の剥製が飾付かざりつけてある。
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「木更津はの方角ですから、ちょうどこうした見当で御座います。海上九里と申しますが、風次第でじきに行かれます」と娘は手甲に日を受けながら指示さししめした。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
と松田さんは卓子テーブルの上に地図を拡げて、三池の七坑というのを一々名を挙げて指示さししめして呉れた後
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
君江は薄地の肩掛を取って手に持ったまま、指示さししめされた椅子に腰をかけると、洋装の売卜者はデスクの上によみかけの書物を閉じ廻転椅子のままぐるりとこちらへ向直むきなおって
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
昨夜権田時介も現に本統の罪人は此の人だと指示さししめす事が出来ると云った、其の本統の罪人が此の高輪田長三でなくば、何うして此の人と指示す事が出来よう、エエ知らなんだ、知らなんだ。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「テムプル先生、テムプル先生、な、なんです、その毛をちゞらした子は? その赤毛の——ちゞらした、全部縮らしたやつ——」そして彼は、ステッキを伸して、そのおそるべき目的物を指示さししめしたが
されど請ふ我にその原因もと指示さししめし、我をして自らこれを見また人にみするをえしめよ、そは或者これを天に歸し或者地に歸すればなり。 六一—六三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ちからかたむつくさぬうち、あらかじ欠点けつてん指示さししめして一思ひとおもひに未練みれんてさせたは、むしすくなからぬ慈悲じひである……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
新舊二つの聖經標みふみしるしつ、この標こそ我にこれを指示さししめすなれ、神が友となしたまへる魂につき 八八—九〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その男を見て、病人は何か言いたげに唇を震わせしが、あわれ口も利けざりければ、指もて其方そなた指示さししめし、怒り狂う風情にて、重き枕をもたげしが、どうと倒れて絶入りけり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と言い懸けて少し体をななめにして、秋波ながしめで男を見ながら指示さししめすがごとく、その胸に手を当てた。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「これです。」と懐より時計を出だして指示さししめせば
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)