持物もちもの)” の例文
十八をかしらに赤子の守子もりこを合して九人の子供を引連れた一族もその内の一群であった。大人はもちろん大きい子供らはそれぞれ持物もちものがある。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ふつうの人間にんげん持物もちものらしいのは、トランクだけだった。トランクは二個あった。そのほかの荷物にもつときたら、なんともいえずふうがわりなのだ。
するとそれはかねてお見覚みおぼえのある女鳥王めとりのみこのお持物もちものでしたので皇后はにわかにお顔色をお変えになり、この女にばかりはかしわの葉をおくだしにならないで
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「そんなめちゃをなさらずに、どうか、ゆるしてあげてください。その金財布かねざいふが、げんざい、あなた方の持物もちものでない証拠しょうこには、がらも色合いろあい女物おんなものではありませぬか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんことだに心配しんはい無用むよう小梅こうめ八木田やぎた年來としごろ持物もちもので、ひとにはゆびをもさゝしはせぬ、ことにはせがれ、はなくにつて紫蘇葉しそはにつゝまれようとものだに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手前てまえじゃ、まあ、持物もちものと言ったようなものの、言わばね、織さん、何んですわえ。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伴藏の持物もちものには不似合だ、ういう訳でこんな物を持っていると聞かれた日にゃア盗んだ事が露顕して、此方こっちがお仕置しおきに成ってしまわア、又質に置くことも出来ず、と云ってうちへ置いて
或は他人の心中しんちゅう持物もちもの看破かんぱするなど、あらゆる奇怪事を行うことが出来る。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「閣下、彼らはあなたの持物もちものを奪うでしょう。」
おせんの大事だいじ持物もちものだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「ふびんではござらんか、かような巡礼道じゅんれいどうの人の持物もちものきあげて、それがどれほどおまえたちの幸福こうふくになるものじゃない。どうか、そんな手荒てあらなことをせずに返してあげておくれ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
サ、おどきよおどきよ、どこへでも退散たいさんしなよ、もう小太郎山こたろうざんとりでは、いまから徳川とくがわさまの持物もちものになる、おまえみたいに、京都でおこもをしてきたようなきたないやつはっておけないんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)