手帛はんけち)” の例文
けれども女は静かに首をっ込めて更紗さらさ手帛はんけちひたひの所を丁寧に拭き始めた。三四郎は兎も角もあやまる方が安全だと考へた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
照子がその手帛はんけち命令いひつけ通り方々へ配つたか、それともこつそり箪笥たんすの中にしまつてゐるかは私の知つた事ではないが、親切な大隈侯は先日こなひだ養子の信常氏が九州へ往つた帰途かへりにも
と言つて侯爵は其処そこにゐた小間使を見て一寸あごをしやくつた。すると、小間使は急いで次のに入つたと思ふと、手帛はんけちの箱を七つ持つてまた出て来た。侯爵はそれを照子の方へ押しやつて
うしろを振り向いた時、右の肩が、あとへ引けて、左の手がこしつた儘前へ出た。手帛はんけちを持つてゐる。其手帛はんけちゆびに余つた所が、さらりとひらいてゐる。きぬためだらう。——腰からしたは正しい姿勢にある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
不断着ふだんぎまゝうちたと見えて、質素しつそ白地しろぢ浴衣ゆかたたもとから手帛はんけちを出しけた所であつた。代助は其姿そのすがた一目ひとめ見た時、運命が三千代の未来を切りいて、意地悪く自分の眼の前に持つてた様に感じた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけなぐさめながら、手帛はんけちほゝながれるなみだいてつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)