手傷てきず)” の例文
そのうちに蝶々てふ/\とうさんの竹竿たけざをになやまされて、手傷てきずつたやうでしたが、まだそれでもげてかうとはしませんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
すると、ふいにそこへ、手傷てきずった大きないのししがあらわれて、そのくぬぎの木の根もとをどんどんりにかかりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「いまにみよ、祈祷きとうにでたものはちりぢりばらばら、呂宋兵衛るそんべえさまも手傷てきずをうけていのちからがら立ちかえってくるであろうわ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この島にち果てることは物の数ではありませぬ。ただいかに心をつくしてもあなたのあまりに深い心の手傷てきずなぐさめることができないのを悲しむばかりでございます。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
彼女はその美くしいものを宝石のごとく大事に永久彼女の胸の奥にめていたがった。不幸にして、その美くしいものはとりも直さず彼女を死以上に苦しめる手傷てきずそのものであった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
苦しみそのものの催眠作用にとらわれてしまった結果であろうか? それともまた手傷てきずを負った兵士が、わざわざ傷口を開いてまでも、一時のかいむさぼるように、いやが上にも苦しまねばやまない
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ちがはいでをられうか? 先祖せんぞしゅうあしやを玩具もてあそびにはしはすまいか? 手傷てきずだらけのチッバルトをみどろの墓衣はかぎから引出ひきだしゃせぬか? 狂氣きゃうきあまり、きこえたさる親族うからほね取上とりあ
そのうちに都夫良つぶらはとうとうひどい手傷てきずを負いました。みんなも矢だねがすっかりきてしまいました。それで都夫良つぶら目弱王まよわのみこに向かって
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ロミオ これ、たしかに。手傷てきずけっしておもうはない。