からか)” の例文
旧字:
が、何を思い出したか、嫣然にやにや笑いながら、「それでも忠一君はの女に思惑でも有ったと見えて、しきりからかって騒いでいましたよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
暑い暑いといいながら二人三人と猫の子のようにくッつき合って、一人でおとなしく黙っているものにからかいかける。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
通って、噴水に挨拶あいさつしたり、道端の小豚コションからかったりしながら、風雅な旅を続けることにしよう
其一群の中には、屹度きつと今夜が始めて……といふ初陣うひぢんの者が一人は居るので、それをおだてたり、それをからかつたり、散々飜弄ひやかしながら歩いて行くのが何よりも楽みに其頃は思つて居た。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
こいつそんなことを云って、おれにからかうのではないかと躊躇していると、かれはそのはらのなかを見透かしたように又云った。
自来也の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おそらく近所の若い者がからかってでもいるのであろうと思いながら、お伊勢は蚊いぶしを煽いでいる団扇うちわの手をやめて、台所の方を見かえると
半七捕物帳:23 鬼娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お前ならば山女郎やまじょろうの方がかろうと云おうとしたが、からかっていると長くなる。市郎は黙って首肯うなずいて、早々に立去たちさった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
源五郎 こんな奴が方々へ行って触れ散らすので、おれが皆んなにからかわれるのだ。貴様こそ狼に喰われてしまえ。
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こっちは酔ったまぎれに何かからかったらしい。そうすると、赤い火の玉がばらばら飛んで来て、若い者の顔や手足に降りかかったので、きゃっと驚いて逃げ出した。
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「お菊どん。何処どこへ……。お使つかいかい。」と、若い男の一人ひとりが何かからかいたそうな顔をして声をかけた。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
女房だったならば、何かからかうつもりだったかも知れねえが、小僧じゃ仕方がねえので、藤次郎もそのまま行ってしまったんだそうですよ。それは当人の白状だから間違いはありますめえ。
半七捕物帳:45 三つの声 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
究竟つまりは無心の小児こどもむかって菓子をるとからかった為に、小児こどもは本気になって是非れろと強請ねだって来たような理屈である。対手あいてが世間を知らぬ小児こども同様の人間だけに、うなると誠に始末が悪い。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
また飯田町辺のある旗本屋敷の中間ちゅうげんは一杯機嫌でそこを通りかかって、白い手ぬぐいをかぶった女にゆき逢ったので、これも例の夜鷹であろうと早合点して、もし姐さんとからかい半分に声をかけると
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)