情事いろごと)” の例文
お前さんのとこのような家風で、婿を持たした娘たちと、情事いろごとをするくらい、下女を演劇しばいに連出すより、もっと容易たやすいのは通相場よ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「大の男が、女の子に焦れただけで、さうもろく死ぬものだらうか。お前は情事いろごとにかけちや本阿彌ほんあみだと言つてるが、どんなものだ」
多分二時を少し廻った時刻でしたが、すると彼処あそこに御存知の様に、何んとか言う情事いろごとほこらがあるんで、そいつを一寸おがんで行く気になったんです。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
情事いろごとに憂身をやつさうなんて、いやはやだ! だが、天も地も一様に真暗になつてしまつたので、悪魔と妖女ウェーヂマとのあひだに一体それからどんないきさつが持ちあがつたかは
煙草屋の看板娘の情事いろごとから、横町の犬の喧嘩まで、そっくりこの愚楽老人へつつぬけなのだから、この、こけ猿の騒ぎにこんなに通じているのも、なんのふしぎもないけれども
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
親子が顔をもあかめないで、平気で自分の情事いろごとを話し合つてゐるのが俳優の家庭である。
調戯からかい半分に田辺の姉さん達から聞かせられても——兄は商法の用事で小父さんの家へよく出入したから——でも彼は大人の情事いろごとなぞというそういうことに対して何処を風が吹くかという顔付を
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
けだし昼のうちるだけに一間のなかばを借り受けて、情事いろごとで工面の悪い、荷物なしの新造しんぞが、京町あたりから路地づたいに今頃戻って来るとのこと。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そう思うのは素人量見で——銭形の親分の前だが、情事いろごとにかけちゃ、丹波彌八郎や網干の七平の足許にも寄りつけない」
お琴の態度は、申分なく馴々しく、色つぽくさへあるのですが、唯簡單な情事いろごとで、八五郎を呼出したのでは無ささうです。
お孝にお前んの身の上はないて、——何が嬉しい、……俺は二階で聞いて胆魂きもたまにえくり返るに、きゃっきゃっきゃっきゃっと笑うて、情事いろごとの免許状ようなものを渡いて帰った。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それくらゐのことなら、念には念を入れて調べてありますよ。はゞかり乍ら。情事いろごと調べとなると、錢形の親分より、あつしの方が得手で。へツ、へツ」
「皆んな申上げてしまひます。隣の部屋で子供達が聽いてゐたし、あの年頃の娘に、情事いろごと内證話ないしよばなしは隱しやうはない」
川柳せんりうに良いのがありますよ——若旦那樣と書いたを下女落し——とね、こいつは親分には御存じのねえ情事いろごとだが」
情事いろごととなると、恐ろしくカンの惡い親分が、今度は當りましたよ。鞘當さやあての目當ては、金澤町の平野屋の若旦那金之助——口惜しいがあつしぢやありません」
「ヘエ——ひどい事になったものだね、いずれは情事いろごとの怨みだろう、——だからい女には生れたくないな」
「何んにもありませんね。尤も、あの下女のお友といふのは出戻りださうで、世帶の苦勞も情事いろごとの苦勞もこふが經てゐますから、妙なところへ眼が屆きますよ」
情事いろごととなると、恐ろしくカンの悪い親分だが、今度は当りましたよ、鞘当の目当ては、金沢町の平野屋の若旦那金之助——口惜しいがあっしじゃありません」
「へエ——ひどい事になつたものだね、いづれは情事いろごとの怨だらう、——だから美い女には生れたくないな」
「大層あらたまりやがつたな。金の工面と情事いろごとの橋渡しは御免だが、外のことなら大概たいがいのことは引受けるぜ」
「大層改まりゃがったな。金の工面くめん情事いろごとの橋渡しは御免だが、外のことなら大概のことは引受けるぜ」
「お粂さんかい、なんだえ、用事ってえのは。滅法忙しいから、情事いろごとの出入りに口をきくのは御免だよ」
「何んにもありませんね。もっとも、あの下女のお友というのは出戻りだそうで、世帯の苦労も情事いろごとの苦労もこうが経て居ますから、妙なところへ眼が届きますよ」
格子の外から聲を掛けると、下女のお種が取次に出ました、四十前後の醜い女で、その上出戻りで子供があつて、情事いろごとよりは溜めることに一心不亂と言つた肌合です。
あのなまちろいのが、裏から来て、私の見る前で呼出しの合図なんかしていましたよ、どうせ私は寝たっきりだから、情事いろごととは縁のない世界に住んでいると思ったのでしょう。
お通夜の歸りの情事いろごとで、こんなことは言ひたくないけれど、人殺しなんかにされちやかなはない
よりを戻したわけでなく、いよ/\手を切る積りで名残りを惜しむため、若旦那を一と晩此処へ泊めたじゃありませんか、お通夜の帰りの情事いろごとで、こんなことは言い度くないけれど
「御武家方のことは知らないが、手前ども町人はまず駄目だね。人に知れては悪いに決っている内証の情事いろごとまでも、誰も知ってくれないと心細いから、ツイ匂わしてみたくなる奴さ」
「あ、氣味が惡い。人の膝なんかゆすぶりやがつて、金の相談なら引受けるが、情事いろごとの相談はお門違ひだよ。たつて訊き度かつたら神明樣の境内に居る、白いひげの小父さんに訊くが宜い」
銭形平次捕物控:282 密室 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「お、気味が悪い。人の膝なんかゆすぶりやがって、金の相談なら引受けるが、情事いろごとの相談はお門違かどちがいだよ。たってきたかったら明神様の境内けいだいにいる、白いひげ小父おじさんに訊くがい」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「銭形の親分が、あれだけは玉に傷さ、情事いろごととなると、まるっきり通用しねえ」
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「錢形の親分の、あれだけは玉に傷さ。情事いろごととなると、まるつきり通用しねえ」
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「ところで、お前はまだ若い——人の情事いろごとには、よく氣が廻ることだらうな」
八五郎は平次の教訓より、この歪んだ情事いろごとの方が、遥かに面白そうです。
「おつと合點、どうせ情事いろごとめか、金の怨みでせう。そんな事なら」
「チェッ、叔母さんつきの情事いろごとなんざ、洒落過ぎて腹も立ちませんね」
大根畑の專次とか言ひましたね、あのなまちろいのが、裏から來て、私の見る前で呼出しの合圖なんかしてゐましたよ。どうせ私は片輪者かたわものだから、情事いろごととは縁のない世界に住んでゐると思つたのでせう。
が、これで平次はようやく自分の築き上げた想像を完全な姿に畫き上げたわけです。情事いろごとにはうとい——と八五郎にからかはれ通しの平次は、そんなつまらぬ逢引の驅け引までは氣が付かなかつたのでせう。
「へエ、そんな事が、情事いろごととかゝはりがあるんですか」
「錢形の親分も、情事いろごと出入りには目が利かないネ」
情事いろごとの揉めがあったそうじゃ無いか」
情事いろごとの揉めがあつたさうぢやないか」
情事いろごとは別だよ、八」
情事いろごとは別だよ、八」