おそれ)” の例文
散々に破壊され、狼藉され、蹂躙されし富山は、余りにこの文明的ならざる遊戯におそれをなして、ひそかあるじの居間に逃帰れるなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「おや、何をするの」と母は手紙の断片を持ったまま、下から仰向あおむいた。眼と眼の間におそれの色が明かに読まれた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いさゝかでも陰鬱なおそれや戦きが湧きあがるようだつたら、吾々は速刻山を下らうよ。」
像材ざうざい椿なるをもつて此地椿をたきゞとすればかならずたゝりあり、ゆゑに椿をうゑず。又尊灵そんれい鳥をとるいみ玉ふ、ゆゑに諸鳥寺内にぐんをなして人をおそれず、此地の人鳥を捕かあるひはくらへ立所たちどころ神罰しんばつあり。
これまでに受けたおそれを除けて胸を浄めて遣れ。4625
ねがはくば、この髮の毛に浮ぶおそれを身につけまとひ
踏むは地と思えばこそ、裂けはせぬかとの気遣きづかいおこる。いただくは天と知る故に、稲妻いなずま米噛こめかみふるおそれも出来る。人とあらそわねば一分いちぶんが立たぬと浮世が催促するから、火宅かたくは免かれぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
像材ざうざい椿なるをもつて此地椿をたきゞとすればかならずたゝりあり、ゆゑに椿をうゑず。又尊灵そんれい鳥をとるいみ玉ふ、ゆゑに諸鳥寺内にぐんをなして人をおそれず、此地の人鳥を捕かあるひはくらへ立所たちどころ神罰しんばつあり。
亂れ散るわが夢のはだか身を知るおそれかな。
おそれおどろきと変じた。欽吾は鍍金ときんわくに右の手をけた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)