応酬おうしゅう)” の例文
旧字:應酬
酒が来ると、盛んに応酬おうしゅうし、小森君、金のことなら心配したもうな、あっちの銀行は僕の電報一本で、何万円でも即座に送って来る。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
そんな応酬おうしゅうをやっているうちにも、「空の虱プー」の修理はドンドン進んで、夕方になる前に、すっかり元のように直ってしまった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
後ろへ廻ってはムクがいる。八面応酬おうしゅうして人と犬と一体、鉄砲を避けんためにもぐり、血路を開かんがために飛ぶ。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三日の夜の式に源氏が右大将と応酬おうしゅうした歌のことなどを聞いた時に、内大臣は非常に源氏の好意を喜んだ。
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
サカシは勿論もちろん才気があって、時に応じた歌謡の応酬おうしゅうくする者の名であったろうが、なおそれ以外に美しい声と清き目眉と、酒をかぶって諧謔かいぎゃくするような気風とを具備しなければ
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
囂々ごうごうたる応酬おうしゅうのこえがぴたりとやみ、一座の眼はいっせいに大将家康を見あげた。
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ありとうを造るような遅〻たる行動を生真面目きまじめに取って来たのであるから、浮世の応酬おうしゅうに疲れたしわをもうひたいに畳んで、心の中にも他の学生にはまだ出来ておらぬ細かい襞襀ひだが出来ているのであった。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
だいじな出世しゅっせのいとぐちをつかもうとするさきへ、またぞろ竹童がじゃまをしにでたので、目的もくてきをはたすまえに、かれのいきのねをとめてしまわなければならぬと、すごいいきおいで応酬おうしゅうしていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こはトック君を知れるものにはすこぶる自然なる応酬おうしゅうなるべし。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
だれかがすかさず応酬おうしゅうした。つづいて
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
砲撃は、ますます熾烈しれつさを加え、これに応酬おうしゅうするかのように、イギリス軍の陣地や砲台よりは、高射砲弾が、附近の空一面に、煙花はなびよりも豪華な空中の祭典を展開した。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼女は応酬おうしゅうする。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いずれもむしょうに昂奮した口調で、こんなことを応酬おうしゅうしたのち、女房は返事も口の中でして奥の間へ飛び込んだ。押入から蒲団をきずり出すと、力一杯それをかかえて釜場の方へ引返して来た。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
身から出たさびということわざを知らぬか。燻精を変質させて送りかえしたのは、お前がわしに、表のレッテルとはちがう変質インチキしゅを贈ってよこしたからだ。つまり変質に対する変質の応酬おうしゅうである。