)” の例文
お前は人界へ立ち帰って父の怨みをえさねばならぬ。水と陸とに別れている父の屍骸を一つに集めて首と胴とを継がねばならぬ……
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
石狩平原いしかりへいげんは、水田已に黄ばむで居る。其間に、九月中旬まだ小麥の收穫をして居るのを見ると、また北海道の氣もちにへつた。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
石狩いしかり平原は、水田已にばんで居る。其間に、九月中旬まだ小麦の収穫をして居るのを見ると、また北海道の気もちにえった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
如何いかがでございましょう、きが四時間、えりが十時間、向うにいる日を一日と見て、たった二日だけ子供たちをお預りくださるわけにはまいりますまいか。
忠「成程、恐入りましたねえ、あだのある者に仇をえさず、仇を恩で復えして置いて、娘をおれの処へ嫁にくれぬかというと、向うで感心して、手付かず貰えますな」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さあれ覆水ふくすいいかでか盆にえるべき、父上にはいずれ帰国の上、申し上ぐることあるべしと答え置き、それより中江、栗原両氏に会いて事情を具し、しょうにその意なきことをことわりしかば
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
此世で仇讐かたきの一つもつて置かなかつたなら、未来で閻魔様えんまさまに叱かられますよ、黄金かねはられた怨恨うらみだから黄金でへしてるのさネ、俳優の様な意気地なしでも、男の片ツ端かともや
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
秀子は益々常の心地にえるに連れ
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
声をかけて置いて、じっと聞き耳を立てたが、吾声わがこえ攪乱かきみだした雑木山の静寂せいじゃくはもとにえって、落葉おちば一つがさとも云わぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
吾にえった彼の眼の前に、両手りょうてにつまんで立った鶴子のしろ胸掛むねかけから、花の臙脂えんじがこぼれそうになって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)