御為おんため)” の例文
旧字:御爲
離れずに、き従うて参られた各〻のご忠節は、涙ぐましゅう存ずるが、これでお別れしたほうが、かえって殿の御為おんためであるまいか
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大使に対し聖上の御為おんために乾盃を上ぐる役を勧めたる名士よりの来状にいわく、むかし外夷種がローマ帝国を支配するに及び
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
洛中らくちゅう是沙汰これさた。関東一円、奥州まで、愚僧が一山いっさんへも立処たちどころに響いた。いづれも、京方きょうがた御為おんため大慶たいけいに存ぜられる。此とても、お行者のお手柄だ、はて敏捷すばやい。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一、父の子孫たる者は徳川の御為おんため、必ずこのあだ討果うちはたすべき者也。仮令たとい血統断絶致すとも苦しからざる事。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
誤りたまいて前原が一味に加わり候ものから今だにわれらさえ肩身の狭き心地ここちいたし候このたびこそそなたは父にも兄にもかわりて大君おおぎみ御為おんため国の為勇ましく戦い
遺言 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
何となればこれは多年の歴史に薫陶されたる国民の精神に根柢を有して居るからである。陛下の御為おんためには水火もこれをいとわずというのは、日本国民の覚悟である。
かゝる悪人を助けおかば旗下はたもとの次三男をして共に大伴の悪事にみて、非道の行いを見習わせれば実に天下の御為おんためにならぬ、捨置きがたき奴、此の兄弟は文治郎此処こゝおいてずた/\に斬り殺し
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かく存命ながらへて今日までも、君にかしずきまゐらせしは、妾がために雄の仇なる、かの烏円をその場を去らせず、討ちて給ひし黄金ぬしが、御情にほだされて、早晩いつかは君の御為おんために、この命をまいらせんと
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
源氏は院の御為おんため法華経ほけきょうの八講を行なう準備をさせていた。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
殿の御為おんためを思い、あなたのご家門を思い、双方のために、要なきものと存じ、焼き捨てた次第です
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の恥をさらすことになるものですが、不思議なことに、ドンナに身分不相応な事でも、天子様と、神様と、親様の御為おんためにする事なら、決して恥かしくないことがわかりました。
父杉山茂丸を語る (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ウーム……それが百二十年後の今日になって、皇室の御為おんために、役立ってまいるとは不思議な訳」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甲州の御為おんためじゃ、主君への忠義じゃ、汝を捨てる、越後へ拾われて行けと、わたくしの身は、世話人の手にかかり、春日山のお旗本黒川大隅さまの家へ奉公にやられました。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の亡父ちちからうけついだ戦いは、皇天皇土こうてんこうど御為おんためであって、それ以外の私心はない。——そう徹していたところに、自然と、あのひろやかな大愛が持てたのだと、わしは思う
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「一かどの者揃いよ。が、三介様の下では、どうにもなるまい。察し入る。……筑前とても、同様、御為おんために相成るようと、心はくだけど、却って、逆に逆にとなり行くてい、心外に思う」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
食客しょっかくだからと思えばしゃくにさわるが、これも一天の君の御為おんためと思えば……」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに呉家と劉家とは、ご婚姻によって、まったく一和同族のよしみすらある今日、なお久しく借り給うてお還しなきは、世上の聞えにも、将来の御為おんためにも、おもしろからぬことかと存ぜられる。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(いつかは、この老骨を朝廷の御為おんために——)
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御為おんための下に果てること
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)