御伴おとも)” の例文
なんと、時節がら愉快のことではありませぬか。もし拙者の御伴おともするものがあるなら、吉備団子きびだんごの一つくらいは差し上げてもよろしい。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
ついでに着せもしてやらうと青山の兄から牡丹餅ぼたもちの様にうま文言もんごん、偖こそむねで下し、招待券の御伴おともして、逗子より新橋へは来りしなりけり。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
髪結はおやおや私も御伴おともをしたいもんだなどと、だいぶ冗談交じょうだんまじりの御世辞を使った末、どうぞごゆっくりと帰って行った。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
信濃の国の御家人角張成阿弥陀仏という者が力者りきしゃの棟梁として最後の御伴おともであるといって御輿みこしをかついだ。同じようにして従う処の僧が六十余人あった。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
どうも旦那、おになるかならないかあやふやだったけれども、あっしゃあ舟を持って来ておりました。この雨はもうじきあがるにちげえねえのですから参りました。御伴おとも
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「シメオン伊留満いるまん一人を御伴おともに召され」ていたが、そのシメオンの口から、当時の容子ようすが信徒の間へ伝えられ、それがまた次第に諸方へひろまって、ついには何十年か後に
さまよえる猶太人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
新米でもちいて農神に供えると、かえるがその餅を背に負うて神の御伴おともをして山へ入って行くといい、それを眼で見た者はまだ無いけれども、農神さまがその後から、あんまり飛ぶなよ
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼はきつと御伴おともさせますと引き受け、前売切符を二枚用意してあると云ふ。
一の酉 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
これをともと謂っている。宮津辺では、日天様にってんさま御伴おともと称して、以前は同様の行事があったが、其は、彼岸の中日にすることになっていた。紀伊の那智郡では唯おともと謂う……。こうある。
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
と呂律の廻らないのがしきりに御伴おともするといふ。こんな汚ない宿屋にゐても面白くないから、勸めるまゝに從つた。車やは千鳥足で先に立つたが、ふらふら搖れて行く月下の影は狐のやうだつた。
山を想ふ (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
ながめて微笑しつ「婆や、私だつて、今日此頃外へ出るなど少しも好みはしませんがネ、折角せつかく母様がお誘ひ下ださるのだから、御伴おともするんです——けれど、婆や、別に心配なこと無いぢやないかネ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
藩内随一の聞え高き御方なるが、若き時より御行跡穏やかならず、長崎御番ごばん御伴おともしての地に行かれしより丸山の遊びに浮かれ、ついにはよからぬともがらまじわりを結びて彼処此処かしこここの道場を破りまはり
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
商人こんな悪人はまた竜女を取るも知れぬと心配して、その行く方へ随って行くとある池の辺で竜が人身に変じ商人に活命の報恩にわが宮へ御伴おともしようと言う、商人いわく汝ら竜の性卒暴、瞋恚しんい常なし
「御父様、この方に唯今御目にかかりましたから、此処まで御伴おともして参りました。」
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ええ、聞きに行きましょう。実は二三日中にさんちうちにちょっと帰国しなければならない事が出来ましたから、当分どこへも御伴おともは出来ませんから、今日は是非いっしょに散歩をしようと思って来たんです」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうですか。じゃすぐに御伴おともしましょう。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)