後棒あとぼう)” の例文
そうではないにしても、あまり気味のよいお客様じゃアないから、先棒さきぼう後棒あとぼうは、ちらと眼で、用心の合図をかわしつつ
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それも其の筈道が違いますので、駕籠は五六間先へおろすや否や、待伏まちぶせして居りました一人いちにんの盗賊が後棒あとぼうかつぎまして
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
駕籠を担いで来た若い衆の草鞋わらじを御覧、——其方じゃない、後棒あとぼうの方だ、——駕籠から血がこぼれたものなら、その草鞋にも血が付いて居なきゃなるまい
前棒さきぼう親仁おやじが、「この一山ひとやまの、見さっせえ、残らずとちの木の大木でゃ。皆五抱いつかかえ、七抱ななかかえじゃ。」「森々しんしんとしたもんでがんしょうが。」と後棒あとぼうことばを添える。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くして彼は先棒さきぼうとなり、𤢖は後棒あとぼうとなって、幾本の重い材木を無事に麓まで担ぎおろしたのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
拾ったというと語弊ごへいがあるが、彼が箱根で山駕やまかごにのると先棒さきぼうをかついでいたのが、この勘太で若くて体もいいのに、ひょろついてばかりいる。そしては後棒あとぼう雲助くもすけ
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自然かがとへ力がはいる。しかるに後棒あとぼうはこれと反対に、前へ前へと身をかがめる。そうやって先棒を押しやろうとする、だからつま先へ力がはいる。でこの四つの足跡は、駕籠舁きの足跡に相違ない。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
疣々いぼいぼ打った鉄棒かなぼうをさしにないに、桶屋も籠屋かごやも手伝ったろう。張抜はりぬきらしい真黒まっくろ大釜おおがまを、ふたなしに担いだ、牛頭ごず馬頭めずの青鬼、赤鬼。青鬼が前へ、赤鬼が後棒あとぼうで、可恐おそろしい面をかぶった。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
走りながら後棒あとぼうがいった。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)