かに)” の例文
いつの間にやらだんだん口がおごって来て、三度の食事の度毎たびごとに「何がたべたい」「かにがたべたい」と、としに似合わぬ贅沢を云います。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
役人をめてから、実業界に這入つて、なにかにかしてゐるうちに、自然と金がたまつて、此十四五年来は大分だいぶんの財産家になつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一體八景といふのは隨分長い間の流行はやり言葉であつて、何八景かに八景、しまひには吉原よしはら八景、辰巳たつみ八景とまで用ゐられて、ふけて逢ふ夜は寢てからさきのなぞと
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
なにをしよう、かにをしようとふのが、金主きんしゆ誰彼たれかれ發案さうだんで、鳥屋とりやをすることになつた。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
我れは知らねど、さもあらばなんとせん。果敢はかなき楼閣を空中にえがく時、うるさしや我が名の呼声よびごえそでなにせよかにせよの言付いひつけに消されて、思ひこゝに絶ゆれば、うらみをあたりに寄せもやしたる。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
明日あすといい、明後日あさってといい、又明日といい明後日と云い、何の手筈がまだ調わぬ、かにの用意がまだ成らぬと、企を起してより延び延びの月日、人々の智慧才覚はもあろうが
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
我を忘れて無遠慮に愚存など申上げましたが、畢竟ひっきょうは只今御話の一品を頂戴致したい旨を申出ずるに申出兼ねて、なにかに、右左、と御物語致し居りたる次第、但し余談とは申せ
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)