彼處あそこ)” の例文
新字:彼処
そのいはとうさんに、彼處あそこ御覽がらん、こゝを御覽ごらん、とひまして、半分はんぶんつちのついた水晶すゐしやうがそこいらにらばつてるのをしてせました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
宿やどかたらないつてふんですがね、ちよい/\彼處あそこるんですつて、いつも、つがひで洒落しやれてるわね。なんでせう。」
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼は文學書生の常例にもれず、早稻田大學の文科に入學し度いと希望してゐるのであるが、彼處あそこは風儀が惡いからいけないと身内の者に反對されたさうだ。
『サンガローまち——おつかさん、わたくしいへ彼處あそこにあるんですねえ。』と少年せうねん兩手りようて鐵欄てすりうへせて
『も少し眞摯まじめに考へて見ませう……若しあの際、彼處あそこに居たのが貴女でなくて別の人だつたらですね、僕は同じことをるにしても、もつと違つた心持でつたに違ひない。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ヂュリ いなうとや? はまだきゃせぬのに。こはがってござるおまへみゝきこえたは雲雀ひばりではなうてナイチンゲールであったもの。夜毎よごと彼處あそこ柘榴じゃくろて、あのやうにさへずりをる。
そら丁度彼處あそこんとこや、もう枯れたが、彼處に百日紅の石を喰うやつがあつてな、其の下んとこを二人で歩いてたのを俺ア見たが、其の時や太政官が知事さんほどえらう見えたで。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
何時いつ彼處あそこつたとき
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「信者たる所以は彼處あそこだ!」と竹山は考へた事があつた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)