-
トップ
>
-
彼男
>
-
かのをとこ
幼君は
眞顏にて、「
苦しからず、
早遣はせ」と
促し
給ふ。さては
仔細のあることぞと
籠中の
人に
齎らせたり。
彼男太く
困じ、
身の
置處無き
状にて、
冷汗掻きてぞ
畏りたる。
春枝夫人も
頻りに
辭退して
居つたが
彼男も一
旦言ひ
出した
事とて
仲々後へは
退かぬ。
幾百の
人は
益々拍手する。
此時忽ち
私の
横側の
倚子で
頻りに
嘲笑つて
居る
聲、それは
例の
鷲鳥聲の
婦人だ。