張物はりもの)” の例文
与吉の家内はいつも勝手の手伝いに来るので、張物はりもの洗濯せんたくも上手にします。人のうわさでは、商売をしていたとかいいました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
子供のむれがめんこや独楽こまの遊びをしているほかには至って人通りの少い道端みちばた格子戸先こうしどさきで、張板はりいた張物はりものをしていた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
三千代はみづいぢりで爪先つまさきすこしふやけたひざうへかさねて、あまり退屈たいくつだから張物はりものをしてゐた所だと云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
張物はりものも五百がものさしを手にして指図し、布目ぬのめごうゆがまぬように陸に張らせた。「善く張ったきれは新しい反物たんものを裁ったようでなくてはならない」とは、五百のつねことばであった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あいまには、張物はりものだ。ブルジョア、地主、坊主が、社会主義社会建設のために働くプロレタリアの鉄の鎚で、それぞれ頭をドッカン、ドッカンやつけられながら進んで来る。
張物はりものする女
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
子供のむれがめんこや独楽こまの遊びをしてゐるほかには至つて人通ひとゞほりのすくな道端みちばた格子戸先かうしどさきで、張板はりいた張物はりものをしてた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
さむしくつて不可いけないから、又て頂戴」と云つた。下女はまだうら張物はりものをしてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
張物はりものする女。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
合方あいかたゆかの浄瑠璃、ツケ、拍子木の如き一切の音楽及び音響と、書割かきわり張物はりもの岩組いわぐみ釣枝つりえだ浪板なみいた藪畳やぶだたみの如き、凡て特殊の色調と情趣とを有せる舞台の装置法と
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
裏は御母おっかさんや、御祖母おばあさんが張物はりものをする所である。よしが洗濯をする所である。暮になると向鉢巻むこうはちまきの男がうすかついで来て、もちく所である。それから漬菜つけなに塩を振ってたるへ詰込む所である。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
物音ものおと目的めあてうらまはると、三千代は下女と張物はりものをしてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)