引担ひっかつ)” の例文
旧字:引擔
チラリ/\と雪が降出ふりだしましたから、かさを借り、番場の森松と云う者が番傘を引担ひっかついで供をして来ますと、雪は追々積って来ました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
丹治はもう山におるのがいやになった。そこから向うのたにへ降りる捷径ちかみちわかれている。丹治は銃を引担ひっかついでそのみちの方へ往きかけた。鶴は動かなかった。
怪人の眼 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
火の消えるのを相図のように、同じ木蔭から又もや怪しい者がばらばらと飛び出して、安行を手取り足取り引担ひっかついで行こうとする。安行も無論抵抗した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
(酒か、)とわめくと、むくむくとおきかかって、引担ひっかつぐようなひじの上へ、妾の膝で頭を載せた。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と挨拶して、裏へ廻ってみずから竿を取出して攩網たまと共に引担ひっかついで来ると、茶店ちゃやの婆さんは
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「歩けるたって世話が焼けていけねえ、引担ひっかついで行くから遠慮をしなさんな」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
という声をあてにして安田一角が振被ふりかぶる折から、むこうの方から来る者がありますが、大きな傘を引担ひっかついで、下駄も途中で借りたと見えて、降る中を此処こゝに来合わせましたは
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しか此方こっちは柔道を心得ているので、倒れながらに、敵の腕を引担ひっかついで投げた。が、生憎あいにくに穴の入口へ向って投げたので、彼は奇怪な叫声さけびごえを揚げながら、再び奥へ逃げ込んでしまった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
面小手で竹刀しない引担ひっかついでお前、稽古着に、小倉の襠高まちだかか何かで、ほおの木歯を引摺ひきずって、ここの内へ通っちゃ、引けると仲之町を縦横十文字にならして歩いた。ここにおわします色男も鳴すことその通り。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「面倒くさいから引担ひっかついでしまえ」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わたしは上田の鉄物商かなものや研職とぎやで、商売用のめ今日ここを通ると、アノ坊さんが大きな毛鑷を引担ひっかついで山路やまみちを登って行く、私も親の代から此の商売をしてるが、あんなに大きな毛鑷を見た事がないから
引担ひっかつげ。」「おっと合点。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)