度盛どもり)” の例文
「何だって、そんな余計な事を云うんだ」と度盛どもりすかして見る。先生の精神は半ば験温器にある。浅井君はこの間に元気を回復した。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どういうつもりか、今までそれを荷厄介にやっかいにしているという事自身が、津田に対しての冷淡さを示す度盛どもりにならないのは明かであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
見ると、ただ輪廓のぼんやりしたあかるいなかに、物差ものさし度盛どもりがある。したに2の字が出た。野々宮君がまた「どうです」と聞いた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けれどもその人が寿命の度盛どもりの上において、自分とははるへだたった向うにいる事だけはたしかなので、彼はこの男を躊躇ちゅうちょなく四十恰好がっこうと認めた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがて度盛どもりあかるいなかで動きした。2が消えた。あとから3がる。其あとから4がる。5がる。とう/\10迄出た。すると度盛どもりがまたぎやくに動き出した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それで穴倉の底を根拠地として欣然とたゆまずに研究を専念に遣つてゐるからえらい。然し望遠鏡のなかの度盛どもりがいくら動いたつて現実世界と交渉のないのは明らかである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
産婆はこういって度盛どもりの柱の中にのぼった水銀を振り落した。彼女は比較的言葉ずくなであった。用心のため産科の医者を呼んでてもらったらどうだという相談さえせずに帰ってしまった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
次には平たくして紙の上へ横に置くと定規じょうぎの用をする。またの裏には度盛どもりがしてあるから物指ものさしの代用も出来る。こちらの表にはヤスリが付いているこれで爪をりまさあ。ようがすか。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助はいへまへに、昨夕ゆふべ肌着はだぎ単衣ひとへも悉くあらためてあらたにした。そとは寒暖計の度盛どもりの日をふてあがころであつた。あるいてゐると、湿しめつぽい梅雨つゆが却つて待ちとほしい程さかんにつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)