平生つね)” の例文
紋「うむ、今日きょうはお兄上様からお心入こゝろいれの物を下され、それを持参いたしたお使者で、平生つねの五郎治では無かった、誠に使者太儀たいぎ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
始て怖気付おじけづいてげようとするところを、誰家どこのか小男、平生つねなら持合せの黒い拳固げんこ一撃ひとうちでツイらちが明きそうな小男が飛で来て、銃劒かざして胸板へグサと。
とどまりて三八いたはり給へと、まことある詞を便りにて日比ひごろるままに、三九物みな平生つねちかくぞなりにける。
と語りおわって、また高く笑った。今は全く顔付も冴えざえとした平生つねの主人であった。細君は笑いながら聞き了りて、一種の感に打たれたかのごとく首を傾けた。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
寒い戸外の空気に冷えたそのほおはいつもより蒼白あおじろく自分の眸子ひとみを射た。不断からさむしい片靨かたえくぼさえ平生つねとは違った意味の淋しさを消える瞬間にちらちらと動かした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『兄さん、貴方は死んで呉れちゃいやですよ。決して死ぬんじゃありませんよ。貴方は普通ただ兵士へいたいですよ。戦争いくさの時、死ぬ為に、平生つねから扶持を受けてる人達とは違ってよ。兄さん自分から好んで、』
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
尋るに本多長門守領分りやうぶん遠州榛原はいばら郡水呑村千五百石の村名主むらなぬし九郎右衞門が實の弟に九郎兵衞と云者あり平生へいぜいよりこゝろたゞしからず其が菩提ぼだい所に眞言宗しんごんしう大石山不動院と云寺あり此住寺も又大の道樂だうらく者にて同氣相求るのことわざもれず九郎兵衞と平生つねに親しくなしけるが九郎兵衞は豫て袋井宿ふくろゐじゆく三笠屋みかさやじん右衞門がかゝへ遊女お芳を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さっぱり解らず、伊之吉は平生つねに変ったこともなく、此の頃では仕事場へも出まして稼いでおりますから、何うしても手懸りが付きません。
そも平生つね七二行徳ぎやうとくのかしこかりしは、仏につかふる事に志誠まごころを尽せしなれば、其の童児わらは七三やしなはざらましかば、七四あはれよき法師なるべきものを。
六九こよひの奇妙きめう既に一鳥声あり。我ここにありて七〇心なからんやとて、平生つねのたのしみとする俳諧風はいかいぶりの十七ことを、しばし七一うちかたぶいていひ出でける。