小児心こどもごころ)” の例文
私は今でもうつつながら不思議に思う。昼は見えない。逢魔おうまが時からはおぼろにもあらずしてわかる。が、夜の裏木戸は小児心こどもごころにも遠慮される。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は小児心こどもごころに、父が戦争に行っていることが、非常に誇りであり、遊び友達の中で、肩身が広かった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
小児心こどもごころに取って返したのがちょうさいわいと、橋から渡場わたしばまでく間の、あの、岩淵いわぶちの岩は、人を隔てる医王山のいちとりでと言ってもい。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(おお、さむ、寒。)と不作法な大きな声で、アノ尼様がいったのが聞えると、母様が立停たちどまって、なぜだか顔の色をおかえなすったのを、私は小児心こどもごころにも覚えている。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あとで聞くと、小児心こどもごころにもあまりのうれしさに、この一幅いっぷくの春の海に対して、報恩ほうおんこころざしであったという。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と小さな声して言聞いいきかせた。織次は小児心こどもごころにも、その絵を売って金子かねに代えるのである、と思った。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其処そこにこの山があるくらいは、かねて聞いて、小児心こどもごころにも方角を知っていた。そして迷子まいごになったか、魔にられたか、知れもしないのに、ちいさな者は、暢気のんきじゃありませんか。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
娘は山賊に捕われた事を、小児心こどもごころにも知っていたけれども、かた言付いいつけられて帰ったから、その頃三ヶ国横行おうこう大賊たいぞくが、つい私どものとなりうちへ入った時も、なんにも言わないで黙っていました。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小児心こどもごころには知れないほどだったから、ついぞ遊びに行った事もなければ、時々、門口じゃ、そのねえさんというのの母親に口を利かれる事があっても、こっちは含羞はにかんげ出したように覚えている。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小児心こどもごころにも朝から気になって、蚊帳かやの中でも髣髴ほうふつ蚊燻かいぶしの煙が来るから、続けてその翌晩も聞きに行って、きたない弟子が古浴衣ふるゆかた膝切ひざぎりな奴を、胸のところでだらりとした拳固げんこ矢蔵やぞう、片手をぬい、と出し
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)