寐息ねいき)” の例文
その時は早や、夜がものにたとえると谷の底じゃ、白痴ばかがだらしのない寐息ねいきも聞えなくなると、たちまち戸の外にものの気勢けはいがしてきた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宗助そうすけ外套ぐわいたうがずに、うへからこゞんで、すう/\いふ御米およね寐息ねいきをしばらくいてゐた。御米およね容易よういめさうにもえなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こんなにぼんやりした想像をしていながら、女は男の寐息ねいきを聞く事を怠らない。寐息は折々うめき声になる。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
その夜、何も知らぬ門野は、又しても私の寐息ねいきを窺いながら、雪洞をつけて、縁外えんそとの闇へと消えました。申すまでもなく人形とのおう瀬を急ぐのでございます。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
赤いくちびる寐息ねいきを吸ふ月のダリヤ
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
すやすやと寐息ねいきかんざしの花は動いても、飾った雛は鼠一疋がたりともさせないんでございますってね、過年いつかもお雛様がみんなで話をするッて、真面目に言いなすったことがある位
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのうち朝餉あさげんで、出勤しゆつきん時刻じこくやうやちかづいた。けれども御米およねねむりからめる氣色けしきもなかつた。宗助そうすけ枕邊まくらべこゞんで、ふか寐息ねいきゝながら、役所やくしよかうかやすまうかとかんがへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そっと見れば、お辻はすや/\と糸が揺れるやうにかすか寐息ねいき
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)