“寐入(ねいり)” の例文
ツートよくお寐入(ねいり)なさった様子で、あとは身動きもなさらず、寂(ひっそ)りした室内には、何の物音もなく、ただ彼(か)の暖炉(だんろ)の明滅が凄(すご)さを添えてるばかりでした。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
母(はゝ)が心(こゝろ)の何方(いづかた)に走(はし)れりとも知(し)らで、乳(ちゝ)に飽(あ)きれば乳房(ちぶさ)に顏(かほ)を寄(よ)せたるまゝ思(おも)ふ事(こと)なく寐入(ねいり)し兒(ちご)の、頬(ほゝ)は薄絹(うすぎぬ)の紅(べに)さしたるやうにて、何事(なにごと)を語(かた)らんとや折々(をり/\)曲(ま)ぐる口元(くちもと)の愛(あい)らしさ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もし/\と、二聲(ふたこゑ)三聲(みこゑ)呼(よ)んで見(み)たが、目(め)ざとい老人(らうじん)も寐入(ねいり)ばな、分(わ)けて、罪(つみ)も屈託(くつたく)も、山(やま)も町(まち)も何(なん)にもないから、雪(ゆき)の夜(よ)に靜(しづ)まり返(かへ)つて一層(いつそう)寐心(ねごころ)の好(よ)ささうに、鼾(いびき)も聞(きこ)えずひツそりして居(ゐ)る。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
母が心の何方(いづかた)に走れりとも知らで、乳に倦(あ)きれば乳房に顔を寄せたるまゝ思ふ事なく寐入(ねいり)し児(ちご)の、頬(ほう)は薄絹(うすぎぬ)の紅(べに)さしたるやうにて、何事を語らんとや、折々(をり/\)曲(ま)ぐる口元の愛らしさ
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)