宿痾しゅくあ)” の例文
だが、彼自身が宿痾しゅくあと思いこんでいる脳病も、大半の原因は過労であった。それで、入院して静養すると、数日でやや徴候が消えた。
渡良瀬川 (新字新仮名) / 大鹿卓(著)
乙羽なき後の硯友社の総務として『文芸倶楽部ぶんげいくらぶ』の一角に巨頭を振っていたが、数年前から宿痾しゅくあのために全く文壇を隠退してしまった。
宿痾しゅくあの痔疾には無花果の葉が、何よりよいとて、先代柳亭市馬が、かねがねこれを採り用いていたと、噺家たちから聞かされていたからだ。
随筆 寄席囃子 (新字新仮名) / 正岡容(著)
マルキシズムの立場で書かれているわけなのだろうが、敗北主義で、政治と文学との見解は、ブルジョア・インテリゲンチアの宿痾しゅくあ、二元論だ。
「これはいかん」と、その日から仮病けびょうをつかい始め、宿痾しゅくあの再発に悩んで近頃引き籠り中と、味方にまで深く偽っていた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宿痾しゅくあの肺炎が再発したのであって、広場の市時代からかかり始めたものだった。彼は自分を馬鹿だとした。結婚が済むまでは倒れないぞと誓った。
宿痾しゅくあのために数週間病床に就かれたまま、何者かの来るのを死の直前まで待たれるようにしながら、空しく最後の息を引きとって行かれたとの事だった。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
棚田判事は、宿痾しゅくあの療養のため、一昨年十一月休職、故郷の大村市に引きこもって、静養に努めていた。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
その頃私はパリーで再発した宿痾しゅくあを郷里へ持ち帰って、ずっと寝床の上に居たが、講談倶楽部に連載された氏の作「愛の十字架」は次の号が待たれたほど面白かった。
国枝史郎氏の人物と作品 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
さびしくなって私にもっと直接な、もっと明瞭な、もっと熱情的な愛の表示を求めるようになったときには幾十年の宿痾しゅくあはすでに膏肓こうこうに入ってもはや如何いかんともすることができなかった。
母の死 (新字新仮名) / 中勘助(著)
さればいかなる場合にも、わたくしは、有島、芥川の二氏の如く決然自殺をするような熱情家ではあるまい。数年来わたくしは宿痾しゅくあに苦しめられて筆硯ひっけんを廃することもたびたびである。
正宗谷崎両氏の批評に答う (新字新仮名) / 永井荷風(著)
思うに人生の惨禍は、の厄難屡来りて遂に貧に陥り、るに家無く、着るに衣無く、くらうに食無く、加うるに宿痾しゅくあに侵され、或は軽蔑せられ、人生に望を失うものよりはなはだしきはなからん。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
大坂奉行の屋敷では、ケンペルはその奉行から十年来の宿痾しゅくあに悩まされていまだに全快しないでいる家人のあることを告げられ、どうしたらそれを治療することができようかと尋ねられた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それに、年来の宿痾しゅくあが図書館の古い文献を十分に調べることを妨げた。
明治の戦争文学 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
陸奥は前年五月に職を辞して専ら宿痾しゅくあの肺患を療養していたが、今年に入って病勢がにわかに悪化し、ついに享年五十四をもって西ヶ原邸に歿した。
渡良瀬川 (新字新仮名) / 大鹿卓(著)
宿痾しゅくあのために数週間病床に就かれたまま、何者かの来るのを死の直前まで待たれるようにしながら、むなしく最後の息を引きとって行かれたとの事だった。
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
一方は宿痾しゅくあの重い病軍師であり、一方は跛行の身を輿上に託して指揮奮戦にあたっている猛将官だった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同棲時代からの宿痾しゅくあにわかかさなって、去年の春ついに大杉の跡を追って易簀えきさくした。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
実際、ひどく衰弱はしているが、単なる老衰ろうすいでもないし、持病らしい宿痾しゅくあも見あたらないのである。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お顔の色を見、お声を聞いただけでも、尋常な御容態でないことはすぐわかる。どこといえる宿痾しゅくあならまだしも、おそらく五臓すべてにおつかれが来ているのではあるまいか」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ちがえるようになったの。これで、身の宿痾しゅくあさえなくば……と思うが、しかし高氏のためには、父が頼りにならぬのも、かえって覚悟の上にはよかろう。これをしおに、高氏に当主を
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、結果においては父の酒癖がついに没落の因ともなり、晩年ずっと病床から起てない宿痾しゅくあを作りつつあったのだが、しかしまた、いついつも乱暴や無理難題を酒癖としている父でもなかった。
元来、紀州の統治は、信長すら手を焼いた宿痾しゅくあがんだった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では、どこが光秀の宿痾しゅくあであろうか」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(遂に彼の宿痾しゅくあは、不治のものか)
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)