)” の例文
今や往年の拿翁ナポレオンなしといへども、武器の進歩日々にあらたにして、他の拿翁指呼のうちに作り得べし、以て全欧を猛炎にする事、易々いゝたり。
「平和」発行之辞 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
僧正の遺品だと云はれる経巻が鼠糞そふんせられて居た。僕の長兄も律宗の僧であると告げたら寺僧は無造作にその経巻の貝多羅葉ばいたらえふ数枚を引きちぎつてれた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
とき恥辱はぢ恐怖おそれとによわきもののこゑをも得立えたてず、いたみ、かなしみ、けるかたちよそほはざるに愁眉しうび泣粧きふしやう柳腰りうえうむちくじけては折要歩せつえうほくるしみ、金釵きんさいしては墮馬髻だばきつ顯實けんじつす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
神は予に明子を見る事、妹の如くなる可きを教へ給へり。然り而して予が妹を、かかる禽獣の手にせしめ給ひしは、何ぞや。予は最早、この残酷にして奸譎かんけつなる神の悪戯に堪ふる能はず。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あはれ半夜の狂風にむなしく泥土でいどすらんか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
故郷は之れ邦家なり、多情多思の人の尤も邦家を愛するは何人か之を疑はむ。孤剣ひつさげ来りて以太利イタリーの義軍に投じ、一命を悪疫にしたるバイロン、我れ之を愛す。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)