もう)” の例文
わたしは北京ペキン滞在中、山井博士や牟多口氏に会い、たびたびそのもうを破ろうとした。が、いつも反対の嘲笑ちょうしょうを受けるばかりだった。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
精進の理想をもうなりとせず、芸術科学の大法を疑はず、又人心に善悪の奮闘争鬩そうげきあるを、却て進歩の動機なりと思惟しいせり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
「だめです。ひとたびもうくらんだお人には。——いかなる神占しんせんも耳には仇事あだごと。つまりは、それが運勢というものでな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち書を鉄幹に贈つて互に歌壇の敵となり我は『明星みょうじょう所載しょさいの短歌を評せん事を約す。けだし両者を混じて同一趣味の如く思へる者のためにもうを弁ぜんとなり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ここおいて才子は才をせ、妄人もうじんもうほしいいままにして、空中に楼閣を築き、夢裏むりに悲喜をえがき、意設筆綴いせつひってつして、烏有うゆうの談をつくる。或はすこしくもとづくところあり、或は全くるところ無し。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
諸君もまた全力をあげてわれわれのもうをひらかれんことを希望します。終わりっ。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
その容子の裡には、何となく、現在の自己の勢威を誇って、いまなお播州の一地方に崛踞くっきょしている者のもうと無能をあわれむような、二つのものがうかがわれる。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
答へて曰く、歌俳両者は、必要上その内容を異にしたりとの論の、もうなることは既にこれを言へり。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ただ俗間かくの如きものを発句ととなへをる者多き故にそのもうを弁ずるのみ。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
あながち愚民のもうとのみはいえまい。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)