好物こうぶつ)” の例文
「何と、じいもそう思うであろうな。もっともその方には恋とは申さぬ。が、好物こうぶつの酒ではどうじゃ。」
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
此洋服で、鍔広つばびろの麦藁帽をかぶって、塚戸にを買いに往ったら、小学校じゅうの子供が門口に押し合うて不思議な現象を眺めて居た。彼の好物こうぶつの中に、雪花菜汁おからじるがある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
鶴見は平生へいぜいの飲物としては焼酎しょうちゅうを用い、焼酎よりもこの泡盛が何よりの好物こうぶつである。
あのおにはたいそうおさけきで、名前なまえまで酒呑童子しゅてんどうじといっております。好物こうぶつのおさけんで、たおれますと、もうからだかなくなって、けることも、にげることもできなくなります。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「何じゃろ。わからないよ、阿備や。わたしにそんな好物こうぶつがあるかしら」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
片肌かたはだぬぎに團扇うちわづかひしながら大盃おほさかづき泡盛あはもりをなみ/\とがせて、さかなは好物こうぶつ蒲燒かばやき表町おもてまちのむさしへあらいところをとのあつらへ、うけたまわりてゆく使つかばん信如しんによやくなるに、そのやなることほねにしみて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「余り好物こうぶつほうじゃないからね、実は、」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「寧子よ。あの子の好物こうぶつは、何であったかの」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)