なかば)” の例文
笏と同じい年頃のその家の主人は、なかば好意をさしはさんでなかばけげんな人見知りな表情で、じろじろ笏の顔を凝見みつめた。
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
たった一つの戸口の扉には外からかんぬきがおろされてある。……キー、キー、キー、キー、天井はなかばまで下りて来た。
颯々さっさと歩いてくと丁度ちょうど源助町げんすけちょうなかばあたりと思う、むこうから一人やって来るその男は大層たいそう大きく見えた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ある時は綾瀬の橋のなかばより雲はるかに遠く眺めやりしの秩父嶺の翠色みどり深きが中に、明日明後日はこの身の行き徘徊たもとおりて、この心の欲しきまま林谷にうそぶおごるべしと思えば
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
吾妻下駄あずまげたの音は天地の寂黙せきもくを破りて、からんころんと月に響けり。渠はその音の可愛おかしさに、なおしいて響かせつつ、橋のなかば近く来たれるとき、やにわに左手ゆんでげてその高髷たかまげつか
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なかばからおきゝに入れまする事でございますが、細かいとこを申上げると、前々よりお読み遊ばしたお方は御退屈になりますから、すぐに続きを申上げます、足利の江川村で茂之助が女房に別れるとき
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
議長の言なかばなるに、「議長」とよんで評議員席に起立したるは、平民週報主筆行徳秋香かうとくあきかなり、彼は先刻来憤怒の色を制して、松本を睨視げいししつゝありしが、今は最早もはや得堪へずして起ちたりしなり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
わたくしはきんのお盥の耳を持っていて、おたのしみなかばに10895
また岩清水ほとばし長沙ちやうさなかば、青葉かげ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ここにゐては愛のなかばの松あかし。
びるぜん祈祷 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
受用のなかばにまた欲望にあこがれるのだ。3250
また岩清水ほとばし長沙ちようさなかば、青葉かげ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)