夢殿ゆめどの)” の例文
夢殿ゆめどのをめぐって中宮寺の庭へさしかかると、あたりが一層森閑としてくる。法隆寺に群る参詣人さんけいにん達もここまでは足をのばさぬのであろう。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
彫刻では、夢殿ゆめどのの秘仏が見られなかったのは止むを得ないとして、薬師寺東院堂の聖観音が、名前さえ挙げてないのはどうしたものでしょう。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
それから夢殿ゆめどのの門のまえにある、あの虚子の「斑鳩いかるが物語」に出てくる、古い、なつかしい宿屋に上がって、そこで半日ほど小説を考えてくるつもりだ。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そして太子たいしとおきさきとはその日おし、あたらしい白衣びゃくえにお着替きかえになって、お二人ふたり夢殿ゆめどのにおはいりになりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
月光のせいもあろうが、その横顔の線は、夢殿ゆめどの飛鳥造あすかづくりの観音を思わせる。手の指までの真白さ。長やかな黒髪は、青毛の毛づやも見劣るばかりである。
建築に於ても、東大寺の法華堂ほつけだう、法隆寺東院とうゐん夢殿ゆめどの新薬師寺しんやくしじ、正倉院その他が、当時のおもかげを伝へてゐる。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「あたしもよすわ。これから、あたしの夢殿ゆめどのへ行って、美しい夢でも見ることにしましょう」
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ゆるにきしめく夢殿ゆめどの夕庭ゆふにはさむ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
法隆寺の夢殿ゆめどの
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あるとき太子たいしはこの夢殿ゆめどのにおこもりになって、七日七夜なのかななよもまるでそとへお出にならないことがありました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかし考えてみると、三月堂の不空羂索観音、聖林寺の十一面観音、薬師寺東院堂の聖観音、中宮寺ちゅうぐうじ観音、夢殿ゆめどの観音など、推古天平の最も偉大な作品は、同じくみな観音である。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
太子たいしのおまいになっていたおみや大和やまと斑鳩いかるがといって、いま法隆寺ほうりゅうじのあるところにありましたが、そこの母屋おもやのわきに、太子たいし夢殿ゆめどのというちいさいおどうをおこしらえになりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)