かわり)” の例文
旧字:
獲物の有無ありなしでおもしろ味にかわりはないで、またこの空畚からびくをぶらさげて、あしの中を釣棹つりざおを担いだ処も、工合のい感じがするのじゃがね。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一首は、楽浪ささなみの志賀の辛崎は元の如く何のかわりはないが、大宮所も荒れ果てたし、むかし船遊をした大宮人も居なくなった。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
頸が確りと繃帯で巻かれ、消毒剤のにおいが強く鼻をうつ、然しひどく頭痛がするだけで別に気分にかわりはなかった。
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
梅花のにおいぷんとしたに振向ふりむけば柳のとりなり玉の顔、さても美人と感心した所では西行さいぎょう凡夫ぼんぷかわりはなけれど、白痴こけは其女の影を自分のひとみの底に仕舞込しまいこんで忘れず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
妻子の葬儀には母もいもとも来た。そして人々も当然と思い、二人も当然らしく挙動ふるまった。自分は母を見ても妹を見ても、普通の会葬者を見るのと何のかわりもなかった。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
平和の鳩の生まれかわりかと思われる姫草ユリ子の純真無邪気な姿が、見る見るレントゲンにでもかけられたような灰色の醜い骸骨の姿に解消して行く光景を幻視した。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
窓越に見える直ぐ前の煙草屋の二階には、死体はもう解剖のために運ばれて行ったので、普段とかわりなく、スリ硝子ガラスのはまったその窓には、電気が明るくともっていた。
銀座幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
うるさいぢやありませんか、傲慢だとか傲慢でないとかそれが私の態度なら面倒臭いからどちらでもあなたの下さる方を頂戴しておきますよ、どつちだつて私にかわりはありやしないから。
青山菊栄様へ (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
運と時とかわりとにさよならを言うときまで
「千代子さん。おかわりもなくって。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何やっぱり道はおんなじで聞いたにも見たのにもかわりはない、旧道はこちらに相違はないから心遣こころやりにも何にもならず、もとよりれっきとした図面というて
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むすめよ、運も時もかわり