基督クリスト)” の例文
基督クリスト方伯つかさの前に立てる時も又同じ。彼等は何事をも自らのために弁ぜざりき。然も其緘黙かんもくけだしこの世に於ける最大の雄弁たりし也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
三日みつか目には美術館でチチアノの「基督クリスト昇天」、「ピエタ」を始めチエボオロの、又貴族政治時代の栄華をドガアルの宮殿に眺めたが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
聖人になりたい、君子になりたい、慈悲の本尊になりたい、基督クリスト釈迦しゃか孔子こうしのような人になりたい、真実ほんとにそうなりたい。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
おこうさんの妹おりゅうさんはかつて剞劂氏きけつし某に嫁し、のち未亡人となって、浅草聖天しょうでん横町の基督クリスト教会堂のコンシェルジェになっていた。基督教徒である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
孔子いわずや、四海しかい兄弟けいていなりと、人誰か兄弟なきを憂いん。基督クリストいわずや、わが天にいます父のむねを行う者はこれわが兄弟わが姉妹わが母なりと、人誰か父母なきを憂いん。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
恍惚うつとりとなるしづけさ。——聖母像マドンナはゐない。架上の基督クリストだけが、弱々しげに咳き込む。⦅けふは、あなた、クリスマス・イヴなんですよ⦆紅茶のスプンの「ちん」と鳴る音。——
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
基督クリストの信徒は信仰の天に生きたる同胞どうはう萬聖節ばんせいせつが行はるるを見る。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
羅馬法皇ろおまほふわうのやうな薔薇ばらの花、世界を祝福する御手みてからき散らし給ふ薔薇ばらの花、羅馬法皇ろおまほふわうのやうな薔薇ばらの花、その金色こんじきしんあかがねづくり、そのあだなるりんの上に、露とむすぶ涙は基督クリスト御歎おんなげき、僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
おゝ、今、基督クリストの其れの如く
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
儒学に入っても、道教に入っても、仏法に入っても基督クリスト教に入っても同じことである。こういう人が深くはいり込むと日々の務めがすなわち道そのものになってしまう。
寒山拾得 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかし聖 Augustinusオオガスチヌス は若い時に乱行を遣って、基督クリスト教に這入ってから、態度を一変してしまって、fanaticファナチック な坊さんになって懺悔ざんげをしたのだそうだ。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
西洋で言って見ると希臘ギリシアの倫理が Platonプラトン あたりから超越的になって、基督クリスト教がその方面を極力開拓した。彼岸に立脚して、馬鹿に神々こうごうしくなってしまって、此岸しがんがお留守になった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)