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國主
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こくしゆ
其の
頃の
近國の
知事の
妾に
成りました……
妾とこそ
言へ、
情深く、
優いのを、
昔の
國主の
貴婦人、
簾中のやうに
稱へられたのが
名にしおふ
中の
河内の
山裾なる
虎杖の
里に
つけ
晝夜となく
駈廻り
働く程に夫婦は又なき者と
慈しみける扨も
此餠屋と云は
國主細川家の御買物方の御
用達にて御城下に
隱もなき
加納屋利兵衞とて
巨萬の身代なる大家に數年來
實體に奉公を
天未に
闇し。
東方臥龍山の
巓少しく
白みて、
旭日一帶の
紅を
潮せり。
昧爽氣清く、
神澄みて、
街衢縱横の
地平線、
皆眼眸の
裡にあり。
然して
國主が
掌中の
民十萬、
今はた
何をなしつゝあるか。