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噛
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かん
と
殆ど
噛で
食めぬばかり
諄々と
説諭すに罪人は心の中に得も云えぬ苦しみを感じ
右せんか
左答えんかと独り胸の中に闘いて言葉には
得出さぬ如く
前回参看※文三は既にお勢に
窘められて、憤然として部屋へ
駈戻ッた。さてそれからは独り
演劇、
泡を
噛だり、
拳を握ッたり。どう考えて見ても心外でたまらぬ。
舌を
噛での狂い死にの、その
臨終の一
刹那とも知らず、抱きしめの激しさに、
形相の怖ろしさに、ぐいぐいと締めつける、骨だらけの
腕の中から、すり抜けて思わず壁ぎわまで
遁げ出し
「
俺ら
家にやねえが、
爺がな
有つたつけな、おとつゝあ」さういつておつぎは
小走りに
卯平の
小屋へ
行つた。
先刻まで
見えなかつた
卯平が
何處から
歸つて
來たかむつゝりとして
獨で
煙管を
噛で
居た。