噛殺かみころ)” の例文
品物しなものけばわかります。だがね、そいつはきてるから、ちかづいたらびついて、すぐ噛殺かみころさないとげられますよ、よござんすか。では、さよなら
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
平中は空を見上げた儘、そつと欠伸あくび噛殺かみころした。花にうづまつた軒先からは、傾きかけた日の光の中に、時々白いものが飜つて来る。何処かに鳩も啼いてゐるらしい。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
然しそれは女が欠伸を噛殺かみころしてその日を送っているに過ぎない、どうです君はそう思いませんか?
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
飼馬が馬小屋から飛出して丹三郎に噛み附き、おえいも丹三郎の様子を案じて其処そこく所を馬が噛み附き、両人とも馬に噛殺かみころされ、お前のかたきを馬が討ったようなもので
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
聞時はしきりににくく思はれ他人ひとの事にても何分なにぶんすて置れぬ性質せいしつなり是犬はやうにして正直なるけものゆゑねこたぬき其外そのほか魔性ましやう陰獸いんじうを見る時は忽地たちまち噛殺かみころすが如しおのれせいはんして陰惡いんあくたくむものは陽正やうせいの者是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大体世の中で何が一番怖ろしいと申しましても人間位い怖ろしいものはありません、妖怪や狐狸変化こりへんげの類に噛殺かみころされたものはすくないが、大概の人間は、常に人間に悩まされているようであります。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
どうしてその僧の狸であることを知ったかといえば、後日少しくかけ離れた里で、いぬ噛殺かみころされたという話だからというものと、その僧が滞在をしている間、食事と入浴に人のいるのをひどくいやがる。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)