喜捨きしゃ)” の例文
ロシア人たちのところから取りかかったが、かれらの進んで喜捨きしゃするのが、みんなに見えた。それからかれは階段をのぼってきた。
「どれ、拙者が喜捨きしゃしてつかわそう」森啓之助が、なにがしかの小粒銀を紙入れからつかみだして、手欄てすりの方へ立ち上がった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここに井戸いどってたびひとにのんでもらおうとおもいます。こころざしのあるかたは一せんでも五りんでも喜捨きしゃしてください。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
徴税以外の職務 チベットの大蔵省はただ租税そぜいを取扱うばかりでない。寄付金または喜捨きしゃの金品も取扱うです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
先日洗耳房せんじぼうのために喜捨きしゃしてくれたお武家が、当屋敷に厄介になっておると聞いて、礼をいいかたがた、ぜひ見てもらいたいものがあって来たのだが、いま玄関で聞けば
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
昔の高僧とよばれる人でさえ、人間を救いながら喜捨きしゃはうけていました。与えられた食物をかてにして救いました。それがすこしも賤しい事でも何でもありません、立派な生活です。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
もって一種の「喜捨きしゃ」を強要するとすれば、彼はその責めを負わなくてはならぬ
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
彼らの喜捨きしゃに手をあわせたが、極く質素な朝夕ちょうせきの衣食に足るものだけを受けて、後は貧しい家の病人のいる家へ、弟子たちの手でわけてとらせた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その金が百四、五十ルピーばかりあった。また外に特に金を喜捨きしゃしてくれた人もあったです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そして、ふところなかをさぐりだしたので、これは喜捨きしゃしてくれるなとおもっていると、とりしたのはふるくさい莨入たばこいれでした。おじいさんは椿つばき根元ねもとでいっぷくすってってしまいました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「そんな義理がたいことには及ばないさ。奈良の茶屋町で、一晩遊べば、あれくらいな金はすぐにけし飛んでしまう。お坊さんへ、喜捨きしゃいたしますよ。はははは」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがしょうこに、それから五、六にちのち、海蔵かいぞうさんは、椿つばきかいあったがけうえにはらばいになって、えにしだのしたからくびったまだけし、人々ひとびと喜捨きしゃのしようをていました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
それが十年以上もつづいているので、佐賀忠とよぶここの主人も、彼の帰依者きえしゃのひとりとなって、大施粥の行事には、便宜と、喜捨きしゃと、あらゆる援助を与えていた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しからば、月輸殿へ、手紙を書け。この男に応分の喜捨きしゃを頼むと。——話のすじはこっちでする」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、世の後進のために、わずかながら、出立の折には、笠のしろとして、一封ずつの金を喜捨きしゃすることにもなっている。だから、この手紙は、新陰堂の役人のほうへ持ってゆくがよろしい
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここから千里の外、たつみの方角といえば、そこには、泰安州たいあんしゅう東岳とうがく泰山の霊地がある。一に罪障の消滅を祈り、二に衆生のための浄財を喜捨きしゃし、三に、あきないがてらの見物もして廻りたいと思う。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さあ、いかほどなりと、ご喜捨きしゃご喜捨
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)