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とむね
ふりがな文庫
“
吐胸
(
とむね
)” の例文
ハツと何やら
吐胸
(
とむね
)
を突くものがあります。頭から熱湯を浴びたやうな心持で、毛氈の上に差置いた、來國俊の一刀を取上げたのです。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
僕は
吐胸
(
とむね
)
を突かれる気がしました。僕は自分のなりをかえりみました。僕はふだん大抵中学時代の制服を着て、
朴歯
(
ほおば
)
の下駄を履いています。
わが師への書
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
栄之丞もその話を聴いて
吐胸
(
とむね
)
をついた。まだ新参の身、殊に年のゆかない妹がこんな
粗相
(
そそう
)
をしでかしては、主人におめおめと顔を向けられまい。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は
吐胸
(
とむね
)
をつきました。どんな意味でも、この場合の「おじさま。」は身に応えた。今度はこっちが赤面して汗になった。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これを聞くと船中の武士ども一度にハッと
吐胸
(
とむね
)
を突いた。誰も返事をする者がない。互いに顔を見合わせるばかりだ。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
迫り
視
(
み
)
るべからざるほどの気高い美しさをそなえているので、毎度、
見馴
(
みな
)
れている町筋の町人どもも、その都度、
吐胸
(
とむね
)
をつかれるような息苦しさを感じて
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
どてらをひろげて、左膳のうしろへ着せかけようとしていたお藤姐御は、この突然の言葉に、
吐胸
(
とむね
)
をつかれて
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そのあまり心細げな侘びしさに
吐胸
(
とむね
)
の突かれる思ひをした駄夫は、気の毒な総江の様を見るに忍びず、戸口の中へ片足を踏み入れたまま咄嗟に後を振向いてしまひ
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
江戸へ下った者はまさかだいじょうぶだろうと思っていただけに、同志もこれには
吐胸
(
とむね
)
を吐いた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
これには新蔵も二度
吐胸
(
とむね
)
を衝いて、折角のつけ元気さえ、全く
沮喪
(
そそう
)
せずにはいられませんでした。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
どうも十兵衛それは厭でござりまする、と無愛想に放つ一言、
吐胸
(
とむね
)
をついて驚く女房。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その時突然恐ろしい考が彼れの
吐胸
(
とむね
)
を突いて浮んだ。彼れはその考に自分ながら驚いたように
呆
(
あき
)
れて眼を見張っていたが、やがて大声を立てて
頑童
(
がんどう
)
の
如
(
ごと
)
く泣きおめき始めた。その声は醜く
物凄
(
ものすご
)
かった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
吐胸
(
とむね
)
を突かれたとはこのことだったろう。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
ハッと何やら
吐胸
(
とむね
)
を突くものがあります。頭から熱湯を浴びたような心持で、毛氈の上に差置いた、来国俊の一刀を取り上げたのです。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私はいちどそういう家に勧誘に入って、
吐胸
(
とむね
)
を突かれたことがある。乳呑児を抱えたその家の主婦は、私の顔を見てなにも云わずに首を横にふった。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
と不意に
背後
(
うしろ
)
より呼留められ、人は知らずと忍び出でて、今しもようやく戸口に
到
(
いた
)
れる、お通はハッと
吐胸
(
とむね
)
をつきぬ。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この話を聴いて、お時は困った事ができたと
吐胸
(
とむね
)
をついた。困ったとは思いながらも、今さら殿様を責める気にもなれなかった。綾衣を憎む気にもなれなかった。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
おすぎはトシに乳を
銜
(
ふく
)
ませながら、最前順吉が観音さまのお守りを見せてくれたときのことを思い浮かべた。あのときおすぎは
吐胸
(
とむね
)
をつかれるような感じをうけた。
夕張の宿
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
件
(
くだん
)
の
売卜者
(
うらない
)
の
行燈
(
あんどう
)
が、
真黒
(
まっくろ
)
な石垣の根に、狐火かと見えて、急に土手の松風を聞く
辺
(
あたり
)
から、そろそろ足許が覚束なくなって、心も暗く、
吐胸
(
とむね
)
を
支
(
つ
)
いたのは、お蔦の儀。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
父ばかりでなく、兄もまた一種の暴君になって来たらしいので、小坂部はいよいよ
吐胸
(
とむね
)
をついた。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
おかみさんも、その嘉吉の思いの外の貧しさには、
吐胸
(
とむね
)
を突かれた。
早春
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
吐
常用漢字
中学
部首:⼝
6画
胸
常用漢字
小6
部首:⾁
10画
“吐”で始まる語句
吐
吐息
吐出
吐月峰
吐露
吐月峯
吐瀉
吐気
吐血
吐雲斎