口叱言くちこごと)” の例文
これも後でたずね合せて見ると、母親の術であるらしく、ほんのちょっとした口叱言くちこごとを種に、子供の同情をかんための手段であった。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
おかみさんは「あら、あら。たいへんなお荷物ね」と、ちょっと呆れ顔して近藤夫人へ何か又、ぶつぶつ口叱言くちこごとをもらしていた。
口叱言くちこごとを言いながら、文次郎は駕籠屋の提灯を借りて、その風呂敷をあけてみた。一種の好奇心もまじって、お妻も覗いた。お峰も垂簾たれをあげた。
経帷子の秘密 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「早く車を雇わっしゃれ。手荷物はあり、勝手知れぬ町の中を、何をあてにぶらつこうで。」と口叱言くちこごとで半ばつぶやく。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
院長にうまく云いくるめられたのは父親の罪ででもあるかのように口叱言くちこごとを云っているのであった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
間食あいだぐひをしたり雑誌を読んだりするやうになり出すと、とき/″\亭主に口叱言くちこごとを云ふ。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
口叱言くちこごとつぶやきながら、裏へ出て、奥庭の泉水から流れてくる水で、含嗽うがいしていた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぬかすぞい、この野郎、贅沢ぜいたくべいこくなてえ、狐店きつねみせの白ッ首と間違えてけつかるそうな、とぶつぶつ口叱言くちこごとを申しましての、爺どのが振向きもせずに、ぐんぐんいたと思わっしゃりまし。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父は口叱言くちこごとを言いながら再び手燭をつけて出ましたが、急におどろいたような声を出して、母をよびました。母もおどろいて縁側へ出たかと思うと、また引っ返してあわただしく行燈あんどんをつけました。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
同じく、医書生の寝ぼけ返辞はいたしますが、遂に起き出るしきもないので、不孤庵ふこあんはとうとうみずから蚊帳をくぐって、何かぶつぶつと口叱言くちこごとをいいながら、玄関の戸を開けに出ました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近頃は爺婆じじばばの方が横着おうちゃくで、嫁をいじめる口叱言くちこごとを、お念仏で句読くとうを切ったり、膚脱はだぬぎうなぎくし横銜よこぐわえで題目をとなえたり、……昔からもそういうのもなかったんじゃないが、まだまだ胡散うさんながら
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とき/″\亭主に口叱言くちこごとを云ふ。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
口叱言くちこごとをつぶやきながら、林助は薬研やげん部屋から外へ出てきた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ときどき亭主に口叱言くちこごとを云う。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
口叱言くちこごとを呟きながら、潜り門をギイーと開けた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)