ばら)” の例文
もちろんかの賤しい下司法師ばらの徒と同日に談ずべきものではないということで、自然その本語が忘れられるに至ったものであろう。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
切利支丹の百牲ばらに侍衆そこなはせ候こと、いらざる儀と思召され候間、柵の所に丈夫に仰付けられほし殺しになされ候やうにと仰聞かされ候。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
南都の衆徒は源空を法敵として立ち、公家階級もまた「念仏宗の法師ばら」を狂僧と認めて、源空の上足を斬り、その徒を獄に投じ、源空らを流罪に処した。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
長順 ふむ、何を隠さう——いたづらに俗世間の義理人情に囚へられ、新しき教の心もえさとらぬ俗人ばら、あの老耄の痩首丁切ちよんぎり、吉利支丹宗へわが入門の手土産てみやげにな致さむ所存。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
と無暗に手を引いて渡場わたしばへ参り、少しの手当を遣って渡しを越え、此処から笹沢さゝざわ、のりばら、いぼりたに片掛かたかけたにと六里半余の道でござりますが、これから先はごく難所なんじょ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
天保四年の飢饉は、北郡に当りがひどくて、ごらんのような有様になり、百姓も漁師ばらも、息をつきかねて他領へ逃げだすので、北郡だけで、空家が八千軒にもなったと申します。
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
すなわち人間の非巣箱主義の巨魁きょかいであったが、しかも鳶の居たるばかり何ほどの事かあらんなどと、一旦いったん批難ひなんをした法師ばらも、後にその目的が池の蛙の保護にあることを知ってを折った。
彼は悪人ばらが捕縛されるのを目にしながらも、何だかまだ現実の出来事と信じ切れない、不思議な夢心地で、当然心配しなければならぬ令嬢美禰子さんのことさえ思い浮ばぬ程であった。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
同宿の悪太郎ばらは、それを好事にして折々貞之進をせびる、せびられゝばすぐ首肯うなずいて、及ぶだけ用立てゝるのが例の如くなっていた、それから或男が附け込んで、或いやしい問題をささげた時
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
山窪の幾むら藁屋、水ぐるままはれる見れば、ほとほとに水も痩せたり。欅ばらただ目に寒く、入りゆけばの目薄きに、雨のごとちる落葉あり。よく見ればいよいよ繁し。声立てていよいよさびし。
のみならず、父達が島へ残してきた漁師ばらといっしょになっていたらしい形跡もある
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
つまるところはいわゆる「下司法師ばら」である。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)