卵塔場らんたふば)” の例文
引合ひきあつて、もつれるやうにばら/\とてらもんけながら、卵塔場らんたふばを、ともしびよるかげそろつて、かはいゝかほ振返ふりかへつて
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もつとも昔は樹木じゆもくも茂り、一口に墓地と云ふよりも卵塔場らんたふばと云ふ気のしたものだつた。が、今は墓石ぼせき勿論もちろん、墓をめぐつた鉄柵てつさくにも凄まじい火のあとは残つてゐる。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
如是我聞によぜがもん佛説阿彌陀經ぶつせつあみだきやう、聲は松風にくわして心のちりも吹拂はるべき御寺樣の庫裏くりより生魚あぶる烟なびきて、卵塔場らんたふば嬰兒やゝ襁褓むつきほしたるなど、お宗旨によりて構ひなき事なれども
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
毒蟲どくむしくるしいから、もつと樹立こだちすくない、廣々ひろ/″\とした、うるさくないところをと、てら境内けいだいがついたから、あるして、卵塔場らんたふば開戸ひらきどからて、本堂ほんだうまへつた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
片側かたがはのまばらがき一重ひとへに、ごしや/\と立亂たちみだれ、あるひけ、あるひかたむき、あるひくづれた石塔せきたふの、横鬢よこびんおもところへ、胡粉ごふんしろく、さま/″\な符號ふがうがつけてある。卵塔場らんたふば移轉いてん準備じゆんびらしい。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)