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卵塔場
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らんたふば
と
手を
引合つて、もつれるやうにばら/\と
寺の
門へ
駈けながら、
卵塔場を、
灯の
夜の
影に
揃つて、かはいゝ
顏で
振返つて
尤も昔は
樹木も茂り、一口に墓地と云ふよりも
卵塔場と云ふ気のしたものだつた。が、今は
墓石は
勿論、墓を
繞つた
鉄柵にも凄まじい火の
痕は残つてゐる。
如是我聞、
佛説阿彌陀經、聲は松風に
和して心のちりも吹拂はるべき御寺樣の
庫裏より生魚あぶる烟なびきて、
卵塔場に
嬰兒の
襁褓ほしたるなど、お宗旨によりて構ひなき事なれども
毒蟲が
苦しいから、もつと
樹立の
少い、
廣々とした、うるさくない
處をと、
寺の
境内に
氣がついたから、
歩き
出して、
卵塔場の
開戸から
出て、
本堂の
前に
行つた。
片側のまばら
垣、
一重に、ごしや/\と
立亂れ、
或は
缺け、
或は
傾き、
或は
崩れた
石塔の、
横鬢と
思ふ
處へ、
胡粉で
白く、さま/″\な
符號がつけてある。
卵塔場の
移轉の
準備らしい。